「エンゼル110番レポート」第42号発行

『子育てママの喫煙・禁煙』
約7割の家庭で喫煙、ママ主導の厳しいルールでタバコ対策
ママの禁煙には「パパの協力態勢」が大きなカギ

 森永乳業は、時代とともに変わりつつある母親像の理解にお役に立つことを願い、1993年
4月から「エンゼル110番レポート」を発行しております。
 この「エンゼル110番レポート」は、エンゼル110番への相談内容から、毎回育児に関す
る傾向についてのレポートをまとめ、ご紹介するものですが、第42回のテーマは、『子育てマ
マの喫煙・禁煙』です。エンゼル110番に電話をかけてきた、2歳未満の子どもがいる母親
100人を対象に、子育て中の家庭での喫煙の実態や、喫煙の影響に対する意識や対策について
聞きました。

 今回の調査では、喫煙経験のあるママもそのうち約半数が妊娠までに禁煙しているという結果
でした。ほとんどのママが喫煙の赤ちゃんへの影響を意識し、重大に受け止めているようです。
しかし7割の家庭で喫煙がなされているのが現状で、赤ちゃんを喫煙の害から守るため、「戸外
で吸う」「換気扇のそばで吸う」「吸う部屋を決める」など、ママ主導で様々な対策がとられて
いるようです。
 一方、現在も喫煙するママの中には「育児ストレス解消のために吸う」人も多く、喫煙の害を
知りながらもやめられず、葛藤に押しつぶされそうなママの声も聞かれました。現在も喫煙する
ママのほぼ全員の夫が喫煙を続けているという結果からも、タバコを断ち切れないでいるママが
禁煙に一歩近づくためには「パパの協力態勢」が大きなカギとなると考えられます。


(本件に関するお問い合わせ先)
  森永乳業株式会社 栄養食品部  清水      03-3798-0133
           広報IR部  伊藤、四分一  03-3798-0126


       エンゼル110番レポート VOL.42              
                                                        
1.今回のテーマ     子育てママの喫煙・禁煙
―――――100人のお母さんに聞きました―――――
 女性の喫煙者が増えるにつれ「エンゼル110番」にはタバコを吸うことでの胎児への影響と母
乳への影響を心配する相談が目立ちます。厚生労働省の「平成12年乳幼児身体発育調査」でも妊
婦の喫煙率が1割に達しています。一方、受動喫煙や副流煙などタバコの害に関する情報は多く
、平成14年からは「健康増進法」により社会の分煙化も進み、社会は禁煙の方向へ流れているよ
うに思えます。
 これまで喫煙経験があっても妊娠をきっかけに禁煙しようとするママは多いと思われますが、
その実態はどうなのでしょうか。またパパの喫煙率はどの程度なのでしょうか。子育て中の家庭
ではタバコはどのように吸われ、またママたちは胎児や赤ちゃんへの影響をどう考えているので
しょうか。2歳未満の子どもを持つママを対象にレポートしました。

喫煙経験のあるママは4割を超えるが、妊娠までに半数が禁煙

 平成11年の厚生労働省発表のデータによれば、日本人の成人喫煙率は男性が52.8%、女性が
13.4%です(出所:厚生省「平成10年度喫煙と健康問題に関する実態調査」)さらに、男性は
「とくに30代、40代が60%以上と高い」、女性では「20代、30代の喫煙率は高くなっている」
などを特徴としてあげています。年代的には「エンゼル110番レポート」の調査対象者と重な
ります。そこでまず両親の喫煙経験について聞きました。(図表1および2)
 ママでは「喫煙経験がない」人が56人と過半数を占めました。「今までに喫煙したことがある
」のは残りの44人ですが、そのうち半数の23人は妊娠までに禁煙しています。「現在吸っている
」という人は17人いますが、そのうちの12人は妊娠中は禁煙し、出産後、断乳してから喫煙を再
開したと答えています。妊娠・出産を通して本数を減らすなどしながら喫煙を続けた人は5人で
した。
 一方、パパでは「現在吸っている」が約7割(69人)で、結婚から妻の出産までに禁煙した人
は10人でした。「まったく喫煙経験がない」は約2割(21人)でした。赤ちゃんのいる家庭では
パパのみの喫煙は53人、ママのみは1人、両親ともの喫煙は16組で、7割の家庭でタバコが吸わ
れていることになります。

喫煙の子どもへの影響でとくに心配なのは喘息、SIDS、発育不良

 タバコの害についてはさまざまな情報がありますが、ママたちは子どもに対する影響として何
を心配しているのでしょうか。全員に聞いてみました。(図表3)最も多くの人が心配している
のは「喘息など呼吸器への影響」(42人)でした。さらに喫煙との関連が指摘されている「乳幼
児突然死症候群(SIDS)」も21人があげています。そのほかでは、早産や未熟児、障害がな
いかどうかなど「胎児・乳児の発育や発達への影響」(27人)、ニコチンが移行するなどの「母
乳への影響」(12人)、「受動喫煙の害」(9人)を心配する人も多いようです。また、家庭内
でのタバコの誤飲(3人)や、外での歩きタバコによるヤケド(3人)などの事故を心配する声も
あがりました。
 一方、具体的にはわからないが「漠然と不安」という人も13人いて正確な情報の不足も感じま
す。「特になし」とまったく気にしていない人は5人だけでした。ほぼ全員のママが赤ちゃんと
の生活では喫煙の影響を意識しており、重大に受け止めているようすです。
 とくに今も喫煙しているママたちからは、「母乳にニコチンが出ないかと心配」(7人)、
「赤ちゃんの肺が黒くならないか」「生後2週間で風邪を引いたのはタバコのせい?」「新生児
黄疸が出たのは自分が喫煙していたから?」など具体的な内容があがり、不安と後ろめたさを
感じているようすが伝わってきました。

赤ちゃんを守る対策は「煙に近寄らせないこと」と、身近な人へのマナー教育

 喫煙が赤ちゃんに及ぼす不安を感じながら7割の家庭で喫煙がなされている現状がありますが
、ママたちはふだんの生活のなかでどのように赤ちゃんを守る工夫をしているのでしょうか。最
も多いのは「ベランダなど戸外で吸う」(41人)、次に「換気扇のそばで吸う、空気清浄機を使
う」(29人)、「家庭内で分煙する(吸う部屋を決める)」(20人)などの対策でした(図表4
)。とにかく「子どものそばは禁煙にする」と決めている人も11人います。パパに「家以外(=
会社)で吸ってもらう」ことで家庭内を禁煙と決めている人も5人いました。「副流煙に関する
本や母親学級で聞いたことをパパに伝え、赤ちゃんのために禁煙を納得してもらった」「吸った
後はパパにせっけんで手洗いしてもらう」など家庭内ではママ主導で厳しいルールが決められて
いる実態もあるようです。何も対策をしていない人はわずか3人でした。
 月齢が上がって外出するようになると外でのタバコ対策も気になるところ。レストランなどで
は禁煙席が増えましたが、たいがい仕切りがなくタバコの煙を防ぎきれないことに不満を感じて
いる人が少なくありません。外ではとにかく「煙のあるところに近寄らない、立ち去る」(13人
)ことが最善の対策のようです。「言える人には子どもの前でタバコを吸わないように頼む」人
もいます。

喫煙の害を知りながらもやめられないでいるママたち・・・

 ほとんどのママは喫煙の害を承知し赤ちゃんへの対策も考慮していますが、「現在吸っている
ママ」(図表1、17人)の心境はどんなものなのでしょうか。「帝王切開で母乳がほとんど出ず
ミルクだし、ママ友だちもけっこう吸っているから・・・」(30歳、10カ月)など母乳育児でな

れば、あるいは断乳後なら吸ってもいいのではと考えている人が7人います。また「母乳中心の
育児なので今は1日15本に減らしている」(20歳、8カ月)とママなりに自粛しているという人
もいます。
 そこで、なぜ喫煙がやめられないのかと質問したところ、タバコ特有の中毒作用に加えて「赤
ちゃんの夜泣きで昼間も頭がボーッとするが、タバコを吸うとスッキリする」(20歳、8カ月)
など育児ストレスでのイライラ解消のために吸うと答えた人が11人います。中には「気持ちとし
てはやめたい。タバコの成分が母乳に移行するというのを最近知ってすごいプレッシャー。タバ
コを吸った後一生懸命、母乳を搾りながらタバコがやめられない自分が追い詰められている感じ
」(27歳、3カ月)と、葛藤に押しつぶされそうなママの声も聞かれました。また、「妊娠まで
吸っていた」人で、その後は禁煙を続けていた(図表1、13人)のうち2人が今後は吸ってしまう
かもしれないと告白しています。
 禁煙は本人の決意と努力を要することですが、喫煙経験のあるママ44人に聞いた「ママの禁煙
へのパパの協力態勢」も大きなカギになりそうです。(図表5)答えは全体の約6割の夫が「マ
マの前では吸わない」など「協力的」でしたが、「協力的でない夫」も2割にのぼります。内訳
では「今もタバコを吸うママ」(17人)の夫の「禁煙への協力度」では約半数の8人が「ママの
前でもお構いなしに吸っていた」など「非協力的」で、ほぼ全員(16人)の夫が喫煙を続けてい
ました。「私のストレスが子どもに向かうよりタバコを吸うほうがまだましと言う」(23歳、1
歳、0カ月)パパや、「夫は吸っているのに私には吸うなと言うんです」(27歳、3カ月)などパ
パの本音も聞かれました。一方で妊娠前に禁煙した人は「夫が吸わないので禁煙に大賛成で私を
励ましてくれた」(24歳、3カ月)と夫からの精神的な支えがプラスになったようです。タバコ
を断ち切れないでいるママが禁煙に一歩近づくためにはパパたちの禁煙意識を高めることも必要
でしょう。


〔HOT VOICE〕
『禁煙はこれでガンバッテ!―禁煙に成功したママたちからのひと言アドバイス―』

・禁煙後3年たたないとニコチンが消えないと聞いていたので、妊娠するかなり前から禁煙対策
 が必要!いきなり本数は減らせないから、まずはミリ数から減らしていく。市販の禁煙グッ
 ズを使うのもおすすめ。(29歳、8カ月)

・自分の気持ち次第。子どもへの責任を考えて!何かひとつ目標を持つとよい。
 (35歳、9カ月)

・何かに打ち込むこと!何もやらない時間があるとタバコに手が伸びるので。(34歳、9カ月)

・タバコを吸うとおなかの赤ちゃんが苦しがってもがくと本に書いてあり、怖くなった。ガム、
 あめをいつも持ち歩いて口寂しくなるとそれを口に入れた。(23歳、6カ月)

・育児雑誌などでタバコの害についてたくさん読んだら、怖くなって吸いたいと思わなくなるは
 ずです。(28歳、2カ月)

・自分がタバコを吸うことで、子どもが病気になったら子どもがかわいそう。どこかで断ち切る
 には、赤ちゃんができた今がチャンスと思ってほしい。(26歳、1カ月)

・イライラするとたまに吸いたくなることはあるが、安全な母乳を飲ませたいし子どもの健康の
 ためと自分に言い聞かせている。私の健康のことも、子どもができてからきちんと考えられる
 ようになった。(31歳、9カ月)

・買わないように努力して貯金するといいのでは?10箱で3000円くらいになるから貯めていけば
 食費くらいになりますよ。(24歳、3カ月)

・我慢するだけ。口寂しいのでガムとかアメ、お菓子を食べて太ってしまったけれど。それから
 居酒屋に行かないようにした。まわりで吸っている人が多いと1箱も2箱も吸っちゃうから。
 (27歳、3カ月)

・つわりでタバコの臭いが嫌になった。それでも何本か吸って徹底的に嫌いになるのも手。
 でも、夫を含めてまわりの協力が一番です!(25歳、6カ月)


調査の概要

●対象 :「エンゼル110番」に電話してきた2歳未満の子どもがいるお母さん100人
●調査方法:電話による聞き取り調査
●調査期間:平成15年12月24日~平成16年2月18日
●対象者の属性:「母親の年齢」  
        10代…1人;20代…55人;30代…41人;40代…2人;不明…1人
       「母親の職業の有無」
        あり…7人;なし…91人;不明…2人
       「居住地」
        首都圏…49人;首都圏以外…40人;回答なし…11人
       「子どもの月齢」
        0~3カ月…33人;4~6カ月…20人;7~12カ月…39人;1歳以以上…12人;
        不明…5人
       「子どもの性別」 男の子…50人;女の子…46人;不明…13人

 データ出所:厚生労働省「平成12年乳幼児身体発育調査」
       http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1024-4b.html
       厚生労働省「平成10年度喫煙と健康問題に関する実態調査」
       http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1111/h1111-2_11.html

2.最近の電話相談から
 母乳は赤ちゃんにとって一番の栄養。授乳中のお母さんからは、食生活や環境、体調の変化な
どが母乳に与える影響を心配する声が多く寄せられます。中には必要以上に敏感になったり、漠
然とした不安を抱えているお母さんも少なくありません。実際に母乳の質が栄養的に問題になる
ことは少ないのですが、赤ちゃんに悪い影響を与えたくない、少しでも質の良いおっぱいを与え
たいという母親としての気持ちが感じられます。

[授乳中の食生活で気をつけることは?]
Q1 授乳中に食べてはいけないものはありますか。また、最近母乳の分泌が悪くなってきたみ
   たいです。分泌がよくなる食品があったら教えてください。  (母30歳、子2カ月)
Q2 甘いものを食べるとおっぱいが苦くなるって本当ですか。   (母24歳、子22日)
Q3 辛いカレーやキムチが大好きなんです。刺激の強い食品は母乳の成分に悪い影響がないか
   心配です。                        (母33歳、子4カ月)

A 昔栄養が不足しがちだった頃は、母乳を出すためにはこの食べ物がよい、と言われたことが
ありましたが、特定の食品に母乳の分泌をよくするという科学的根拠は特にないようです。授乳
中の食生活は、基本的に特定の食品に偏らないようバランス良く食べることが一番大切です。ま
た、甘いものや刺激の強い食品は、お母さん自身の健康のためにも食べ過ぎることは避けましょ
う。どうしても食べたい時に、たまにとる程度ならまず問題はないと思います。
神経質になりすぎて食事がストレスになってしまっては逆効果ですが、授乳をきっかけに普段の
食事を見直すことができるとよいですね。
 ただ、お母さんの体質や母乳の出方には個人差があります。例えば、脂っぽいものを多くとる
と乳腺がつまりやすいといったことがある場合は、様子をみながらコントロールしていきましょ
う。

[お母さんの風邪と母乳の関係]
Q4 昨日から熱っぽくて風邪をひいたみたいです。授乳しても大丈夫でしょうか。また風邪薬
   を飲んだ場合はどうですか。               (母32歳、子3カ月)

A お母さん自身の体力がかなり消耗しているのでなければ、普段通りに授乳しても差し支えな
いと思われます。しかし、お母さんが風邪をひくと赤ちゃんも感染することがありますから、赤
ちゃんの世話をする時は手を洗い、マスクをしましょう。
市販の一般的な風邪薬であれば、問題のないことが多いのですが、中には薬の成分が母乳中に出
るものもありますから、授乳中であることを伝え、薬局で薬剤師に薬を選んでもらうか、受診し
て医師に処方してもらうと安心でしょう。

[母乳成分の変化]
Q5 ずっと母乳で育てていますが、母から「母乳はだんだん栄養がなくなるのよ」と言われ、
   不安になりました。離乳食より母乳が好きなので栄養不足が心配です。 
   (母26歳、子9カ月)

A 母乳の成分は個人差もあり、分泌する時期によっても多少の変化がありますが、この時期の
母乳に栄養がなくなるわけではありません。
 まだ母乳が十分にでるのであれば、安心して与えていて大丈夫でしょう。ただ満9カ月くらい
からは少しずつ離乳食が栄養の中心になっていくことが望ましい時期です。また離乳食後期から
2歳くらいまでは、鉄不足による貧血が起こりやすい時期と言われてますから、離乳食のメニュ
ーに鉄が多く含まれる食材やフォローアップミルクを積極的に取り入れるように工夫してみまし
ょう。