2003年3月25日 報道発表

世界初※1、独自の成形工法技術による木製振動板採用

「ウッドコーンスピーカー」を開発(特許9件申請中)

~楽器やボーカリストなどの原音に迫る自然な再生音を実現~




写真は、「ウッドコーンスピーカー」ユニット(左)、と振動板(右)です。





 日本ビクター(株)は、従来のスピーカーの振動板素材に比べ、よりすぐれた音響特性を持つ“木”そのものを振動板にプレス成形加工しスピーカーに採用した「ウッドコーンスピーカー」を世界で初めて※1開発しました。
 この技術は、当社の“原音探求”へのこだわりのもと、長年培ってきた音響技術により開発したもので、楽器やボーカリストなどの原音に迫る自然な再生音を実現します。



<主な特長>
1.世界初※1、原音に迫る自然な再生音を実現する木製振動板の開発に成功
当社独自の成形工法技術により、厚さ約0.28mmの木製シートをコーン型およびドーム型振動板に成形可能にするとともに、温度や湿度などの経時変化による振動板の変形を抑えました。また、自然な響きの再現に重要な木材の成分であるリグニンなどを損なわずに振動板を成形することにより、楽器やボーカリストなどの原音に迫る自然な再生音を実現します。さらに、スピーカーのキャビネット、振動板、センターキャップをすべて木製にすることで音色を統一できます。
※1:2003年3月25日現在、量産化技術として。

2.優れた解像度を実現する高い伝搬速度と理想的な内部損失※2(表1参照)
振動板の素材としては、伝搬速度が高く内部損失が大きいものが理想的とされ、木材はその理想に近い特性を持っています。今回、多くの木材の中でも優れた特性を持つ無垢のカバ材を採用。しかも、軽量で剛性が高く、優れた解像度と歯切れのよいサウンドを再現します。
※2:物体に衝撃が加わった時に、内部でその衝撃を減衰させることで、スピーカーの振動板では、損失が小さいと共振が発生しやすくなります。

3.定在波※3の発生を防ぐ異方性の伝搬性質(図1参照)
木目方向と木目に直角方向では伝搬速度が異なるという木材の異方性の伝搬性質により、均一素材にありがちな定在波の発生による共振を防ぎ、自然で滑らかな音響特性を実現しました。
※3:音波の反射により、音響特性が不均一になる現象。

4.美しく、高級感のある木目の外観
無垢の木材をそのまま加工しているので、表面に木目が美しく表れ、高級感のある外観になります。

<表1:材料の物性値> <図1:伝搬性質イメージ>


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<開発背景>
 DVDオーディオ、SACDなどの高音質デジタルコンテンツの登場により、コンテンツ本来のクオリティを余すことなく再現できるスピーカーを望む声が高まっています。
 スピーカーの振動板の主な素材としては、紙パルプ、プラスチック、アルミ等の金属がありますが、音の伝搬速度が高いものは内部損失が小さく内部損失が大きいものは音の伝搬速度が低い、という相反する物性値を有しており、伝搬速度が高く内部損失が大きいものが理想的とされる振動板素材の特性に対しては、一長一短があります。しかも素材が均一なため、あらゆる方向で伝搬速度が等しくなり定在波が発生しやすく、音質の阻害要因になっています(オブリコーンや楕円スピーカーは除く)。
 そこで当社は、木材が高い伝搬速度と理想的な内部損失を有し、異方性の伝搬性質を持つこと、さらに軽くて剛性が高いことに着目し、“木”そのものを振動板にプレス成形加工してスピーカーに採用した「ウッドコーンスピーカー」を世界で初めて開発しました。


<技術解説(振動板成形加工)>

木製振動板成形加工は、下記のフローチャートに基づき成形加工します。カバ材の丸太からロータリー方式により厚さ0.28mmの薄板シートを作成し、裏面に和紙を貼り合せ適正サイズにカット。このシートにV字状の切り込みをつけ、成形時の割れを防止するために潤滑剤に含浸させます。
(潤滑剤は、木製シートに水分を与え軟化させるとともに、シートの中に水分を保持させます。)
1次プレスによりコーン型の基本形ができあがります。乾燥後、熱硬化性樹脂に含浸させ、2次プレス、離型剤含浸、3次プレスと進め形状を固定させます。最後に、防湿剤を塗布した後で中心および外形を抜くことにより、コーン型振動板形状に完成させます。
潤滑剤の採用と各プレス工程でのプレス圧力、金型温度、プレス時間を最適値に設定することにより、ほぼ100%の歩留まりで成形加工できるようになり、あわせて熱硬化樹脂と防湿剤を組み合わせることで、経時変化に対応できるようになりました。

■振動板成形フローチャート
木製薄板シート
切り出し
V字状切り込み 1次プレス 2次プレス
3次プレス 中心・外形抜き
+エッジ取付け
完成


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