2017年12月7日

企業と学術研究機関との連携が盛んになっていることがNature Indexから明らかに

2017年12月7日

シュプリンガー・ネイチャー

企業と学術研究機関との連携が盛んになっていることがNature Indexから明らかに

Nature Indexの最新のデータから、企業は、独自に行う研究開発を縮小し、科学的発見の負担を外部機関と分担する傾向が強まっていて、大学や公的研究機関との共同研究が急増していることが明らかになりました。

本日発行されたNatureの特別企画冊子「Nature Index 2017 Science Inc.」では、企業が科学分野において果たす役割の変化や、その結果として学術研究がどのように発展しているのか、さらにこの移行が高品質研究に与える費用対効果を調査しています。

以前の研究から、企業からの科学的成果の出版数が長期的に減少していて(この傾向はエレクトロニクスから通信、製薬業界まで、すべての産業部門で顕著)、企業の研究投資の減少と連動していることが明らかになっています。米国企業の総研究開発費に占める基礎・応用研究費の割合は、1980年から2006年の間に26%から22%に縮小しました。デューク大学の研究者らによると、Web of Scienceデータベースに見られる、米国の平均的な企業からの論文数は、1980年には年間29件でしたが、2006年には12件に減少しました。

しかし、Nature Indexのデータから、企業から出される全体的な研究成果の数は減少しているものの、産学官における連携は2012年の12,672件から2016年の25,962件へと倍増していることが明らかになりました。また、2012年から2016年の間にNature Index収録ジャーナルに掲載された企業からの論文の90%近くが、大学や公的研究機関に所属する研究者との共著論文でした。

Nature Index 2017 Science Inc.によると、企業による研究開発が産学間の共同研究へと移行することにより、科学的研究が認視される範囲が拡大され、また学術的な生産性の向上に貢献すると考えられます。Nature Indexに収録されている高品質の論文を分析すると、共著者に企業の研究者が含まれる論文の方が一般の注目を集める傾向にあることがわかりました。これは、出版論文に関するニュース記事や政策文書、ブログ、ソーシャルメディアの投稿を含む議論をAltmetricのアテンションスコアを用いて追跡することで明らかになりました。

同時に、産学共同研究が増加するにつれ、学術機関が応用研究により注力するようになっています。米国の大学が出願した特許数は、1996年の2266件から2014年の5990件へと急増し、また、大学発のスタートアップ企業の数は、2001年の約400社から2013年の約760社へと倍増しました。10年前と比べると、より多くの特許で科学と工学の文献が引用されるようになりましたが、引用された論文のうち企業研究者によって執筆されたものはそのごく一部です。

Nature Indexの創設者であるDavid Swinbanksは次のように述べています。

「今回の特集は、高品質な研究における産学間の共同研究に本質的な変化が見られることを示しています。これは、企業が研究に関して外部との連携を増やしてきたこと、さらには政府機関が大学や公的研究機関に対し社会還元や商業化に即座につながる研究成果を求めるようになってきたことが組み合わさった結果です。産学間のより密接な共同研究は好ましいものである反面、長期的に見ると研究機関における基礎研究と応用研究のバランスが変化するという懸念があります。イノベーションにつながる科学の主要な貢献の多くは、何十年も前に実施され、その当時は明らかな応用がない基礎研究にルーツがあるということは心に留めておく必要があるでしょう。」

2012年から2016年までの5年間にわたるNature Indexのデータは、国全体の研究成果の観点から、企業がもっとも貢献している国はどこか、また企業の高品質な研究をけん引している国はどこかを示しています。

Nature Indexが追跡した全世界の企業研究のほぼ半数(49.25%)を米国企業が占め、2位は日本(10.65%)、以下、英国(6.07%)、中国(5.03%)、ドイツ(4.99%)と続きます。

国別の総出版数に企業の論文が占める割合に関しては、世界有数の製薬会社を擁するスイスがトップで3.73%、2位は日本(3.34%)、以下、韓国(3.18%)、米国(2.76%)、英国(1.83%)でした。

今回の特別企画冊子では、2012~2016年の5年間を対象として、高品質な科学研究を出版するトップ企業の一覧表も掲載されています。1位は、米国の巨大テクノロジー企業IBM社、以下、スイスの製薬会社エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社(2位)とノバルティス社(3位)、韓国のサムソン社(4位)、そして米国製薬企業のファイザー社、メルク社、そして日本のNTT(7位;日本最高順位の企業)と続きます。さらに、トップ10には、英国の製薬会社グラクソ・スミスクライン社(8位)とアストラゼネカ社(9位)、米国製薬会社のアムジェン社(10位)が入りました。

さらに、この特別企画冊子では、最も生産性が高い企業と大学のパートナーシップについても示しています。これは、企業と大学の2者間の2012~2016年における共同研究スコアに基づいて順位付けを行いました。1位は、ノバルティス社とバーゼル大学とのパートナーシップ、2位は、韓国のSamsungと成均館(ソンギュングァン)大学校のパートナーシップ、次いで、ノバルティス社とハーバード大学とのパートナーシップ、中国のBGIとデンマークのコペンハーゲン大学とのパートナーシップが続きます。

詳しくは、以下のNature Indexのウェブサイトからご覧ください。
https://www.natureindex.com/


記者の方々へ:

2014年11月に初公開されたNature Indexのデータベースは、現役科学者からなる独立したパネルが選定した、68誌の自然科学系学術ジャーナルから出版される研究論文の著者の所属機関を記録しています。
ジャーナルの選定に関しては、大規模調査によって得られた2800人超からの回答に基づいて、検証を行いました。Springer Natureによれば、これら68誌からの引用だけで、自然科学系学術ジャーナルからの引用総件数の30%近くを占めると推定されます。

直近12カ月のNature Indexデータが、natureindex.com にて、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で公開されています。これにより、世界150カ国の8000以上の機関の最新の研究成果を分析することができるのです。同ウェブサイトでは、特定の研究機関から直近12カ月間に出版された論文情報を主題別に整理された形で閲覧することができます。各機関の国際的・国内的な共同研究に関する情報も入手できます。さらに2012年まで遡って、機関別・国別の年間ランキング表も見ることができます。ウェブサイトに無料登録すれば、ユーザーは、機関別・国別の研究成果発表数の経時的な変化を表示させることができ、さらなる分析を行うために生データをエクスポートすることも可能になります。

Nature Indexでは、以下の3種類のカウント法を採用しています:
・ Article count(AC)– 論文において、ある国ないし機関から1人でも著者として名前が挙げられていれば、その国ないし機関の論文1点(ACを1)として数える計算方法。その論文に著者が1人しかいなくても、100人の著者がいても、それぞれの著者の所属国(または機関)において論文1点として数えられることになるため、同じ1本の論文が、複数の国(または機関)においてAC として数えられることを意味します。
・ Fractional Count(FC)– FCは、ある論文に対する各共著者の相対的貢献度を考慮に入れる方法。論文1本につき最大FCは1.0です。この1点分を、共著者全員が等しく貢献したという仮定のもと、共著者間で等しく分けます。例えば、10人の共著者がいる論文の場合、各共著者はそれぞれ0.1分のFCを割り振られることになります。
・ Weighted Fractional Count(WFC) – 天文学および宇宙物理学の比重を調整するため、上記FCに対し重み付けを行う方法。これら2つの分野では、国際的学術ジャーナルで出版される全論文の約50%が、わずか4誌のジャーナルで発表されているのです。これは他の学術分野と比べると5倍も高い割合です。天文学および宇宙物理学の両分野のデータは、他の全ての分野と全く同じ方法で集計されていますが、こうした理由によってWFCでは、これら4誌の論文に、他の論文に比して5分の1の重み付けを行い、釣り合いを取っています。
・ Collaboration score (CS) – 2つの機関や国同士の共同研究を双方向のコラボレーション・スコアとしています。これは、両機関・国の論文毎のFCを合計した数値です。一機関の共同研究力はコラボレーションスコアの平均値で測ります。これは、ある機関が共同研究している全機関とのコラボレーションスコアの平均ということになります。例えば、機関Aが機関BとCと共同研究をしている場合、機関AのコラボレーションスコアはA+BとA+Cの平均値です。

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