世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を開発・設置

内閣府のSIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」の施策として、情報通信研究機構をはじめとする研究グループは、世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を開発し、埼玉大学に設置しました。本レーダは、発達する積乱雲を観測し、20~30分先の局地的大雨等を高精度に予測可能です。

2017年11月29日

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

公立大学法人首都大学東京、東芝インフラシステムズ株式会社

国立大学法人名古屋大学、国立大学法人埼玉大学、内閣府

世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を開発・設置

~ゲリラ豪雨や竜巻を、格段の高精度・わずか30秒・3次元構造で観測~

 内閣府のSIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」の施策として、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)をはじめとする研究グループ*が開発した世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を埼玉大学に設置しました。

 本レーダは、発達する積乱雲を観測し、20~30分先の局地的大雨や竜巻危険度を高精度に予測することが可能であり、東京オリンピック・パラリンピックでの効率的な競技運営、自治体での水防活動や住民への避難指示、さらに日常生活では洗濯物の取込みなどへの活用も目指しています。

*研究グループ

 国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長: 徳田 英幸)

 公立大学法人首都大学東京(学長: 上野 淳)

 東芝インフラシステムズ株式会社(代表取締役社長: 秋葉 慎一郎)

 国立大学法人名古屋大学(総長: 松尾 清一)

 国立大学法人埼玉大学(学長: 山口 宏樹)

【背景と課題】

 近年、局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)や竜巻による甚大な被害が社会問題となっています。このような局所的で突発的な大気現象の詳細な構造や、前兆現象を直接観測するのに最も有効な手段は、「気象レーダ」であるとされています。

 最近では、都市域の降雨をより細かく観測できる小型の「XバンドMPレーダ」が整備されてきています。これらのレーダは、パラボラアンテナを機械的に回転させて降雨観測を行うため、地上付近の降雨分布観測には1~5分、降水の3次元立体観測には5分以上の時間を要します。

 局地的大雨をもたらす積乱雲は10分程度で急発達し、竜巻もわずか数分で発生し移動するため、それらの兆候をより迅速に察知するためには、従来よりも短時間で詳細に観測できる技術が必要でした。これを実現したのがフェーズドアレイ気象レーダ技術です。フェーズドアレイ気象レーダ(PAWR)は、30秒で雨雲の3次元立体構造を観測することができ、ゲリラ豪雨などの突発的な豪雨の早期検知手法の開発に新たな展開をもたらしました。

 一方で、MPレーダにはフェーズドアレイ気象レーダにはない偏波観測機能があるため、雨量の観測精度の面ではMPレーダの方が勝っていました。そこで、MPレーダと同等の観測精度を持ち、かつ、フェーズドアレイ気象レーダの高速3次元立体観測を可能とする「マルチパラメータ」フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)の開発が期待されていました。

【今回の成果】

 今回、SIPのプログラムにおいて、MPレーダの高い観測精度とフェーズドアレイ気象レーダの高速(およそ30秒で)3次元観測性能を併せ持ち、長期にわたる降雨の連続観測も可能な世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を開発しました。MP-PAWRは、フェーズドアレイ気象レーダと同様に、30秒で雨雲の3次元立体構造を観測でき、さらに、水平偏波と垂直偏波を同時に送受信する二重偏波機能を持っています。この新たな機能は、フェーズドアレイ気象レーダで用いていた導波管スロットアレイアンテナに代えて、2次元配列した偏波共用パッチアンテナを採用することにより実現しました。

 MP-PAWRは、11月21日(火)に埼玉大学の建設工学科3号館に設置され、無線局免許取得に向けて性能評価を開始しました。MP-PAWRでは、降雨量の観測精度が格段に向上するため、ゲリラ豪雨等の正確な早期探知にも大きな威力を発揮することが期待されており、SIPのプログラムにおいては、MP-PAWRを中心にした豪雨や竜巻、浸水などの早期予測に取り組んでまいります。

【MP-PAWRの利活用について】

 SIPでは、MP-PAWRを用いたゲリラ豪雨の早期予測・浸水予測、強風予測の情報提供を行い、東京オリンピック・パラリンピックでの効率的な競技運営、自治体での水防活動や住民への避難指示、さらに住民の洗濯物の取込みなど様々な場面での利活用を目指しています。例えば、東京オリンピック・パラリンピックでは、屋外競技の開始・中断・継続等の判断に活用したり、豪雨到来前に屋根がある場所に観客を誘導したりすることが可能になります。また、自治体が浸水の危険性がある場所を事前把握することによって、余裕を持って水防活動や住民への避難指示を行うことができるようになります。さらに、日常生活においては豪雨を避けて洗濯物の取込みができるなど、Society 5.0の実現につながっていく取組です。

【今後の展望】

 今後、所定の性能評価を行った後に無線局免許を取得し、来年夏のゲリラ豪雨等の早期探知・予測実証実験に向けた試験観測を実施します。来年夏のMP-PAWRを用いた実証実験では、市民を対象としたゲリラ豪雨の予測情報、自治体等を対象とした豪雨・浸水予測情報の提供、強風ナウキャスト情報の提供等を実施いたします。

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プレスリリース添付画像

マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ 埼玉大学設置時の様子(アンテナにレドームを被せる直前)

マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ開発コンセプト

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