『第8回 歯科プレスセミナー』を開催

2017年10月16日

一般社団法人 日本私立歯科大学協会

~急発展を遂げる、歯科医療が見据える国民健康の最前線について講演~

『第8回 歯科プレスセミナー』を開催

講演1:自分では分からない口腔がん

講演2:歯科治療で進む技術革新の流れ

〜先進医療から生まれたCAD/CAM冠〜

~それぞれのエキスパートが、研究分野の最前線を紹介~

 一般社団法人 日本私立歯科大学協会(所在地:東京都千代田区、会長:三浦 廣行)は、2017年10月12日(木)に、コンファレンススクエア エムプラス 「サクセス」(東京都千代田区)において、『第8回 歯科プレスセミナー』を開催いたしました。

 これは、歯科医療の見地から、皆様の健康的な生活を考え、サポートすることを目指し、当協会が2010年から開催しているプレスセミナーです。毎回、口腔衛生の最前線の情報をお伝えする講演を行っており、今回で8回目を迎えます。

 今回は、近年、患者数が増加している口腔がんの発見法や予防法を紹介する「自分では分からない口腔がん」と、歯科領域における急速なデジタル化の流れを紹介する「歯科治療で進む技術革新の流れ〜先進医療から生まれたCAD/CAM冠〜」をテーマに、講演を行いました。

 それぞれの専門家による最前線の研究結果を、ご参加いただいた28名の報道関係者の皆さまにお伝えいたしました。

「第8回 歯科プレスセミナー」講演風景

■講演 1
テーマ : 「自分では分からない口腔がん」
講師 : 奥羽大学歯学部 口腔外科学講座 教授 髙田 訓氏

近年増加中の「口腔がん」は10万人に1人がかかり、死亡率も高い“怖い病気”

 口腔内にはさまざまな病気があり、なかでも注意が必要な疾患が、口腔がんである。10万人に約1人の割合で発症するが、近年は患者数・死亡数ともに増加し、国立がんセンターの統計では、2016年の患者数は21,700人、死亡数は7,600人に達すると予測された。

 口腔・咽頭がんの死亡率(日本人、2013年)は46.10%で、これは、他の部位のがんの死亡率(胃がん38.7%、直腸がん19.50%、乳房がん19.30%、前立腺がん17.80%)と比べるとかなり高い。米国の口腔がん死亡率(19.1%)と比較しても、約2.5倍も高い数字である。

口腔がんの死亡率が高いのは、目に見えるがんなのに発見が遅れるため

 口腔がんの死亡率が高い理由として、口腔がんへの認知不足により受診が遅れること、検診が普及しておらず早期発見されないことが挙げられる。

 実際に、ある統計では、口腔がんの初期での受診率は4割にも満たず、6割以上が進行してからの受診であった。進行の程度による死亡率はStageⅠで0〜2%だが、StageⅡで約20%、StageⅢで約60%、StageⅣで約80%まで高まる。StageⅠの手術では舌の一部の切除で済むことが多いが、StageⅣでは顎の骨から頸(くび)のリンパ節まで広範囲を切除するケースもあり、会話や食事などに支障をきたしQOL(生活の質:Quality of life)が悪化する。

 死亡率が高いもう一つの理由は、進行の速さにある。StageⅠ・ⅡからStageⅢへは約2カ月、StageⅢからⅣへは約1カ月で進む。3カ月の放置で、手術後のQOLや死亡率に大きな開きが生じることになる。

歯科医師と口腔外科専門医の連携と、診断技術の向上により、早期発見・治療が実現

 口腔がんの早期発見のためには、異常を見つけたらすぐに口腔外科専門医の診察を受けることが必要だ。そのためには、歯医者さんをかかりつけ医にして、定期的に診てもらう習慣を持ってほしい。

 現在の診察では、口腔がんを見落とすことはほとんどない。歯科大学での学生への教育もしっかりと行われ、観察する部位(唇の裏や舌の下など20カ所以上)や触診する部位(顎の下のリンパ節など10カ所以上)を定式化した方法が確立されている。

 さらに、早期がんを発見する技術として、特殊な染色を使う「特殊染色」や、光を当てて見分ける「蛍光観察」などが普及し、診断の精度がさらに向上している。

口腔がん検診での発見率は0.13%と有効性は高く、検診の普及が急務である

 現在の口腔がん検診は、一部の自治体が、地元の歯科大学・歯学部や歯科医院などと連携して行っているのみである。検診による口腔がんの発見率は0.13%で、他の部位に比べて高い確率だ(胃がん0.11%、子宮がん0.08%、肺がん0.04%)。

 口腔がんの発生率(約0.001%)と比較すると、口腔がん検診の有効性は明らかであり、検診の普及が急務と考える。一方で、この発見率から、潜在的な口腔がん患者が多数いるとも推察される。

歯科大学・歯学部による口腔がんへの取り組み/予防方法

 口腔がんに対しての歯科大学・歯学部での取り組みも進み、学生に口腔がんおよび前がん病変、腫瘍類似疾患などについて教育している。

 また、歯科医師に対し、出身大学などを通じて相談・紹介する仕組みを構築している。歯科医師から専門の口腔外科への紹介率が上がるほど、病脳期間(気づいてから受診するまでの期間)が短縮化されるというデータもあることから、医師間の連携が早期発見・治療に貢献することになる。

 口腔がんは、比較的予防しやすいがんだ。誘発要因である、たばこ、歯並びの悪さ、歯科の補綴器具(詰め物・冠・入れ歯)などの自己管理と、歯科医院での定期健診により、リスクをさらに下げることができる。

 歯科大学での教育レベルや若い医師による診断技術も高まっており、口腔がんの早期治療が実現することで、国民の健康長寿に貢献することができる。

■講演 2
テーマ : 「歯科治療で進む技術革新の流れ〜先進医療から生まれたCAD/CAM冠〜」
講師 : 北海道医療大学歯学部 口腔機能修復・再建学系 デジタル歯科医学分野 教授
           疋田 一洋 氏

●歯科の新領域として注目される「デジタル歯科医学分野」/複雑な過程が必要な歯の修復で、デジタル・機械化を推進

 歯科の技術には大きなデジタル化の流れが起きており、私の専門は「デジタル歯科医学分野」という非常に新しい領域である。本講演では、その最新情報をご紹介したい。

 今回は、奥歯のクラウン(歯の大部分が失われたところに人工の歯冠をかぶせる技術)を例に、その製作技術の進化を説明する。従来のクラウンは、オーダーメードの手作りで、以下のように複雑で手間のかかるものである。

<従来のクラウンの製作工程>

①支台歯形成:クラウンの土台となるように歯を削り整える、②印象採得:口の中に印象材を押し付けて固め、支台歯周辺の型を取る、③作業模型製作:印象材にできた歯の陰型に石膏を流し込み、口の中の状態を再現した模型を製作、④WAX UP:手作業によりクラウンの形に作ったワックスを当てはめる、⑤埋没:ワックスを型枠の中の埋没材に埋め込む、⑥鋳造:高温で焼却し、溶かした金属をクラウンの型に流し込み完成、⑦調整・装着:噛み合わせなど調整・研磨をして口の中に装着。

●コンピューターと機械を使用し手作業過程を省いた「CAD/CAM冠」が2014年から保険適用

 こうした工程を機械化する試みが1970年代から始まり、その中心が、内山洋一先生(当時の北海道大学歯学部教授)であった。私は同先生に誘われて1987年から研究を始め、CAD/CAM(コンピューター支援による設計と加工)によるクラウン製作に成功した。その後、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトを利用して、歯科用のCAD/CAMシステムのプロトタイプを製作。これを1999年に商品化したが、保険適用外のため普及が進まなかった。

 そこで、素材にハイブリッドレジンを選び研究を進め、先進医療の承認を経て、2014年にCAD/CAM冠が小臼歯に限定で保険適用となった。現在は大臼歯での適用をめざし、研究とエビデンスの蓄積をはかっている。 

 CAD/CAM冠では、①支台歯形成、②印象採得、③作業模型製作、⑦調整・装着の工程が従来と同じであるが、手作業となる④WAX UP ⑤埋没 ⑥鋳造が省かれる。その代わりに、④SCAN(レーザーで歯の形をデータ化) ⑤CAD(コンピューター上での歯の設計) ⑥CAM(データを使った切削機械による加工)が加わる。CAMでは、一本を約20分で自動的に削り、時間短縮が図られる。CAD/CAM冠の素材には、通常の硬質レジンに比べて約2倍の曲げ強さを持つハイブリッドレジンを使用する。

●「CAD/CAM冠」は保険適用により着実に普及/作業効率向上により歯科技工士の働き方改革にも貢献

 保険適用となったCAD/CAM冠は、2016年に推計100万本以上が製作され(従来の金属冠は350万本)、システム機器は年間約1,000台が販売されている。従来のクラウンの素材である金銀パラジウム合金は、金属価格の高騰、金属アレルギーの問題、審美性の点から見直しをする潮流があり、CAD/CAM冠の普及に追い風となっている。

 また、近年、歯科技工士の数が減少(今後10年で20%減少と予測)するなか、その労働環境や作業効率を向上させるCAD/CAM冠には、雇用創出や働き方改革の点でも期待が寄せられている。

●歯科大学・歯学部によるCAD/CAM教育が充実/デジタル化の進展により歯科技術に新たな時代が到来

 こういったデジタル化の進展は、クラウンに限らない。本年開催された学会では、3Dプリンターと組み合わせたCAD/CAMデンチャー(入れ歯)の開発などが紹介され、今後、新しい素材を使った試みが進むと思われる。 また、口の中を直接スキャンする「口腔内スキャナー」の普及により、「印象採得」と「模型製作」の工程もデジタル化が可能になった。非接触型スキャナーによる印象採得は短時間で終わるため、歯科の診療をより安全で快適なものにすると期待される。

 口腔内スキャナーによる計測とCADによるクラウン設計、CAMによるクラウンの加工が実用化された現在、機械による歯の自動切削が行えるようになれば、すべてのステップの「フルデジタル化」が現実となる。それに向けた研究も進んでおり、コンピューターと機械によって、機能の優れた歯科技工物が一気通貫で正確、安全、効率的に作れるようになる未来がもうすぐ訪れようとしている。

【開催概要】

日  時 : 2017年10月12日(木) 14:00~15:30

会  場 : コンファレンススクエア エムプラス 1F 「サクセス」(東京都千代田区丸の内2-5-2)

主  催 : 一般社団法人 日本私立歯科大学協会

内  容 :

 ■講演 1

   テーマ : 自分では分からない口腔がん

   講師 : 奥羽大学歯学部 口腔外科学講座 教授 髙田 訓 氏

 ■講演 2

   テーマ : 歯科治療で進む技術革新の流れ〜先進医療から生まれたCAD/CAM冠〜

   講師 : 北海道医療大学歯学部 口腔機能修復・再建学系 デジタル歯科医学分野教授

                                                                                            疋田 一洋 氏

【ご参考】

一般社団法人 日本私立歯科大学協会について

 日本私立歯科大学協会は、昭和51年に社団法人として設立しました。歯科界に対する時代の要請に応えられる有用な歯科医師を養成していくため、全国17校の私立歯科大学・歯学部が全て集まり様々な活動を展開しています。また、加盟各校では、私立ならではの自主性と自由さを生かしてそれぞれに特色を発揮しながら歯科医学教育を推進しています。

 日本の歯科医学教育は、明治以来、私立学校から始まったもので、現在も歯科医師の約75%が私立大学の出身者であるなど、加盟校は歯科界に大きな役割を果たしてきました。本協会ではこのような経緯を踏まえながら、今後とも歯科医学教育、研究および歯科医療について積極的に情報提供を進めていきます。

<加盟校>

日本全国の全ての私立歯科大学・歯学部(15大学17歯学部)が加盟しています。

○北海道医療大学歯学部     ○岩手医科大学歯学部     ○奥羽大学歯学部 

○明海大学歯学部          ○東京歯科大学        ○昭和大学歯学部     

○日本大学歯学部          ○日本大学松戸歯学部     ○日本歯科大学生命歯学部 

○日本歯科大学新潟生命歯学部  ○神奈川歯科大学       ○鶴見大学歯学部

○松本歯科大学         ○朝日大学歯学部       ○愛知学院大学歯学部 

○大阪歯科大学         ○福岡歯科大学

【所在地等】〒102-0074 東京都千代田区九段南3-3-4 ニューライフビル内

      TEL.03-3265-9068 FAX.03-3265-9069

      E-mail:jimkyoku@shikadaikyo.or.jp

      URL   :http://www.shikadaikyo.or.jp

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