中高生のクラブ活動における脱水リスク 指導者やリーダーの方にぜひ知っておいていただきたいこと

2016 年 5 月吉日

教えて!「かくれ脱水」委員会

中高生のクラブ活動における脱水リスク

指導者やリーダーの方にぜひ知っておいていただきたいこと

【監修者プロフィール】

服部益治(はっとり・ますじ)

教えて!「かくれ脱水」委員会 委員長、兵庫医科大学小児科学教授 医学博士

日本小児科学会 (専門医)、日本小児保健協会(理事)、日本腎臓学会(指導医・専門医)、兵庫県小児科医会 (理事)、日本夜尿症学会(常任理事)、日本小児科連絡協議会「自動車乗車中の子どもの安全推進合同委員会」(委員長)など。著書に、『腎・泌尿器疾患診療マニュアル(共著)』(日本医師会)、『腎臓病の食事指導ハンドブック(共著)』(南江堂)、『保健医療ソーシャルワーク実践(共著)』(中央法規出版)、『子どもの臨床検査-脱水(共著)』(診断と治療社)など

クラブ活動には文化部と運動部があります。運動部は活動場所や競技服の違いはありますが、運動で身体を鍛えることが主であり、その過程で身体に負荷(無理)をかけている活動です。負荷をうまく回避し、身体を鍛え、そして競技でより良い結果が出れば、個人として将来の自信に、またチームワークで人間の交わりの素晴らしさを知り一生の友人作りに繋がります。

一方、集団でのクラブ活動では、競技性や仲間との関係性から、自分の体力に見合った運動以上の負荷を与えがちです。能力を超える負荷は、場合により怪我をしたり、後遺症を残したり、と負の結果になります。そして、運動は発汗が常に伴いますので、身体の中の液体(体液)管理が重要です。この対策を怠りますと、脱水症に陥り、精神面において集中力低下を、体力面においてはパフォーマンス低下を来します。では、汗とは、発汗の正しい対応とは、クラブ活動における環境変化リスクをもとに考えてみましょう。

1.体格・体力の個人差はライフスタイルの環境変化に顕著

学校の学年ごと、すなわち年齢ごとに体力差があります。その個人差は、ライフスタイル上での大きな「変わり目」といえる新入学の時期に顕著です。中学1年は、少し前まで小学生であり、この体格と体力において、同じ部活動の先輩である中学3年生とは大きな差があります。また高校1年と成人並みの体格・体力の高校3年生との差も想像以上です。この体格・体力差で同じ運動量を求められますと、慣れない日々の生活から過度の緊張にある一年生(新入生)にとって、過剰な発汗が生じやすくなり、また水分補給のタイミングを逃しやすいです。

2.環境変化に順応しないといけない季節の変わり目に注意

人は「恒温動物」で、外界の温度変化に関係なく、ほぼ一定の体温を保たなければ体調を崩す動物です。四季がある日本では気候が変わるときに、気温および湿度に順応し、体温を一定に保つために発汗が重要な身体反応となるのです。昨今は、地球温暖化に伴い、気候変動が激しく、四季の突然な変化をよく経験します。季節の「変わり目」が徐々にではなく、急な変化が頻回に発生すると身体の順応が難しくなります。よって、知らない内に過剰な発汗が生じているのです。気温の急な上昇に加えて、湿度が高まり、これからの「梅雨」の季節は要注意です。環境の変わり目に起こりやすい脱水。これに正しく対応しなければ、心身とも乱れてしまいます。

3.運動場所は、夏場の環境変化によって身体への負荷が違う

やはり夏場になると、運動中の熱中症・脱水症による中高生の救急搬送のニュースを目にします。炎天下での屋外での激しい運動は、大量の発汗による体液の消耗があります。また体育館や武道場を使う室内競技でも、空気の対流や放射熱などの関係で、同じ運動量でも、暑い日には脱水リスクが増加します。「屋外・屋内でのクラブ活動のリスクと対策」を理解し、予防や対策をとって欲しいと思います。最近は暑さ指数という、環境省が毎日発表するその日の行動指針があり、それに基づいた熱中症予防のための運動指針も発表されています。指導者の方は、ぜひ参考にして練習メニューや場所に変化を持たせるといいでしょう。

汗が口に入るとわかりますが、少し塩辛いものです。発汗で、体内から水分と共に、塩分(ナトリウム)など電解質が失われているのです。短時間の散歩ならば水やスポーツ飲料水でもよいのですが、運動部のような激しい運動における発汗では、ナトリウムをはじめとする電解質の喪失は想像以上に増加しています。この時に、ナトリウムを含まない水やナトリウム濃度が低いスポーツ飲料水で液体補給を行うと、体内のナトリウム濃度は適切な濃度まで上昇できません。必要なナトリウム濃度に改善できませんと、血圧低下、意識レベル低下など危険な状態(低ナトリウム血症)になることをありますから、注意が必要です。私は、運動に伴う発汗では、汗に近いナトリウムが入った液体、すなわち経口補水液の補給を勧めています。運動クラブ活動における脱水管理で、リスクを軽減しましょう。

【クラブ活動・環境別リスクと対策】

水分と共に塩分の補給を→運動にともなう大量の発汗には、水分補給時に経口補水液を用意する

<屋外>

Q:晴天の日、放課後のグラウンド。ここには何が潜んでいるでしょう?

A:脱水リスクは、夏のグラウンドに潜んでいます。

(主な脱水リスク)

・直射日光

・屋外での激しい運動

・大量の汗をかく

・日陰のない環境

・グラウンド(芝の無いハード、人工芝はとくに注意)の照り返し

(リスク対策)

・休憩時の風通しのいい日陰の確保

・競技によって帽子やサンバイザーの着用

・こま目な水分と塩分の補給

・吸湿性・通気性のいいウェア

・休憩のときに、水に濡らしたタオル・タオルで巻いた保冷剤などでアイシング

・丁寧なウォームアップ

・WBGT(暑さ指数)の「運動に関する指針」を参照し、練習を調節

(注意しておくこと)

・朝食、昼食を摂っているか? 

・急な気温上昇・湿度の高い日はリスクが上がる

・梅雨明けなど季節の変わり目では、暑さ慣れ(暑熱馴化)をするまでは控えめに

<屋内>

Q:放課後の、体育館や武道場 ここには何が潜んでいるでしょう?

A:通風性のない体育館・武道場は多湿高温。風を嫌う競技特性や防具などのユニフォームも脱水リスクに

(主な脱水リスク)

・通気・通風性の欠如(卓球・バトミントンなど)

・大量の汗

・自分で止めにくいゲーム感覚の対人練習

・密閉性の高い防具や稽古着(剣道・柔道など)

(リスク対策)

・汗をなるべく拭き取る(体表面の汗滴がないように)

・大型扇風機、窓を開けるなど、通気性・通風性の確保

・定期的な休憩

・休憩のときに、水に濡らしたタオル・タオルで巻いた保冷剤などでアイシング

・サイズの大きい吸湿性・通気性のいい練習ウェア

・丁寧なウォームアップ

・WBGT(暑さ指数)の「運動に関する指針」を参照し、練習を調節

(注意しておくこと)

・朝食、昼食を摂っているか? 

・急な気温上昇・湿度の高い日はリスク上昇

・梅雨明けなど季節の変わり目では、暑さ慣れ(暑熱馴化)をするまでは控えめに

教えて「かくれ脱水」委員会のウェブサイト「かくれ脱水 JOURNAL」にて公開しています。

http://www.kakuredassui.jp/column17

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