2007年4月12日

社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン


子ども支援NGOセーブ・ザ・チルドレンのグローバルキャンペーン 
“Rewrite the Future〜いっしょに描こう!子どもの未来”VOL.2 最新活動レポート
〜Last in Line, Last in School〜

セーブ・ザ・チルドレンでは、2006年9月よりグローバルキャンペーン“Rewrite the Future〜いっしょに描こう!子どもの未来”を展開しています。このキャンペーンは2010年までに800万人の子どもに教育の機会を提供することを目指すものです。
一連の重要な国際援助会議に先駆けて、最新の実態をお知らせします。

■世界の初等教育の実態
世界各国で初等教育の就学年齢に達していながら学校に通っていない子どもたちの数は、1億人以上から7,700万人以上へと、劇的に減少しています。しかし、この減少傾向は紛争の影響を受けた国では見られず、依然として約4,000万人もの子どもたちが教育を受けられない状況でいます。このままでは、初等教育の完全普及というミレニアム目標は達成できないということになります。

1.援助の偏り
国際社会は教育の支援にあたり、紛争の影響を受けた国々よりも、安定した国々を選ぶ傾向が顕著に見られます。貧困と紛争の悪循環を断ち切る望みがほとんどない国々は、最も援助を必要としているにもかかわらず、未だ状況が改善されていません。

2.劣悪な教育環境
紛争の影響を受けた国々では、破壊されるなど学校は使用できない状態になり、避難していたりなどで教師が決定的に不足しています。そして、子どもたちは容易に少年兵の対象とされたり、低賃金労働者として搾取され、人身売買や虐待を受けやすくなっています。

<今回のSCのレポートで明らかになった問題点>
・現在、OECDの開発援助委員会(DAC)加盟国22ヶ国のうち20ヶ国が、2015年までにすべての子どもたちに教育を受けさせるために、適正に割り当てられた分の資金を出資していません。
・特に、フランス、スイス、スペイン、日本、アメリカ、オーストリア、イタリア、ドイツは、紛争に影響を受けた国々への教育支援に予定された割り当て分の出資を、計画に沿った形で実行出来ていません。
・出資提供の基準に見合わないという理由で、紛争の影響を受けた国に教育援助を与えることに対し、多くの国が目をつぶっています。
・最も教育を必要とする、紛争の影響を受けた国々に対し、最低限の出資しかされていません。世界の教育を受けられない子どもたちの半数以上が紛争国にいるにもかかわらず、それらの国々への教育支援は全体の20%以下に留まっています。

2015年までにすべての子どもたちに学校に行く機会を与えるという目標を達成するためには、年間90億ドルの資金が、さらに必要とされます。少なくともその半分(52億ドル)は、資金援助があれば大きな変化が期待できる、紛争に影響を受けた国々に与えられるべきなのです。

紛争に影響を受けた国への教育援助額を劇的に増やし、より安定した国と同様の支援を行わない限り、「すべての子どもに教育を」というミレニアム目標は失敗に終わる可能性があります。

紛争の結果として、様々な事情により、基本的なインフラの整備がされていなかったり、教育方針や戦略に不足があったりする場合、教育支援にはなかなか出資されません。しかし、この教育への援助こそ、国際社会の義務だといえます。
教育は、子どもたちにとっても国家にとっても未来への鍵です。もし2015年までにすべての子どもたちに学校へ行く機会を与えると約束した豊かな国々が、紛争の影響を受けた国々の教育への希望を無視するならば、子どもたちが未来を描くことは不可能になります。

<紛争の下で暮らす子どもたちの現実> 
○2003年において、武力紛争の半数以上に15歳未満の兵士が動員されました。
○紛争国の子どものうち3人に1人が教育を受ける機会を奪われています。
○セーブ・ザ・チルドレンの統計によると、コンゴ民主共和国(DRC)では、初等教育就学年齢(6歳から11歳)の子どもたち約580万人、そして12歳から17歳までの青少年600万人が学校に通っていません。この未就学の子どもたちの数は、世界的に見ても最も高い数値を示しているケースの一つと言えます。
○ネパールでは、2005年1月から8月の間に、11,800人以上の学童が地方の学校から連れ去られ、思想を吹き込まれたり、あるいは強制されて武装集団の一員となってしまいました。
○アフガニスタンでは、正規の資格を持つ教員のほとんどが紛争地から逃げ出しました。現在、専門の資格を持った教員は全体の15パーセントにも届きません。そして、7歳から13歳の女の子たちの60パーセントは学校に通っていません。
○アンゴラでは、国内の子どもたちのほぼ半数(数値にして44パーセント)が学校に通っていません。女の子たちの多くは学校を去り、下働きに出たり、物売りをしたり、結婚してしまう場合もあります。そのほかのケースとして、戦争によって障害を追う子どもたちもたくさんいます。

■セーブ・ザ・チルドレンとは?
1919年設立の、国連公認のNGOです。現在、世界で28ヶ国のそれぞれ独立した組織が、パートナーを組み、世界最大のネットワークを活かして、110ヶ国以上で活動を展開しています。80年以上の活動は、世界のNGOの代表格として各国政府からもその重要性を認められています。


アフガニスタンの子ども