2005年09月09日

大日本印刷 eTRON仕様の高速セキュリティモジュール 『 SECURETRON32-B 』 を開発

大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義俊 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、eTRON仕様に準拠した高速処理可能なセキュリティモジュール 『 SECURETRON(セキュアトロン)32-B 』 を開発し、10月からサンプル出荷を開始します。

【開発の背景】
eTRONはYRPユビキタスネットワーキング研究所の坂村健所長(東京大学大学院教授)が提唱するセキュリティモジュールユニットで、携帯情報端末や情報家電に組み込むSIM※1サイズの小型ICカードです。機器同士の相互認証を行い不正な制御を排除したり、有料コンテンツ利用時のセキュリティを担うほか、異なるeTRON間で、電子マネーや電子チケットなどの価値データを安全・確実に移動させる機能も担っています。
現在はeTRON/16Dualという接触、非接触双方のインタフェースを持つものが利用されており、ルネサステクノロジ社の16bitCPU 「AE45X1チップ」 が使用されています。当社はこのチップを使ったカードやUIM※2を製造しています。
今回当社は、より高速な32bitCPU 「AE57Cチップ」 を使い、モジュール内での生体認証が可能な 『 SECURETRON32-B 』 をYRPユビキタスネットワーキング研究所の協力を得て自社開発しました。処理速度向上、大容量化、通信高速化、生体認証機能搭載によって、YRPユビキタスネットワーキング研究所が開発したユビキタスコミュニケータ(以下:UC※3)などの小型携帯端末機や情報家電などのセキュリティモジュールとして、その実用化に拍車がかかります。

【特長】

  • 高速処理
    ルネサステクノロジ社の耐タンパー性※4の高い32bitCPU 「AE57Cチップ」 を採用。
    従来のeTRON/16Dualに比べて約3倍の高速処理が可能。
  • 大容量
    ファイルなどを格納できるデータ容量がeTRON/16Dualに比べて約3倍の132KBに増加。
  • 高速通信
    eTRON仕様のeTPプロトコル(T=14)だけでなく、ISO7816※5のT=1プロトコルもサポート。T=1プロトコルでは、9600bps、38400bps、76800bpsの3通りの通信速度を選択可能で、より高速化を実現。(従来のeTRON/16Dualは38400bpsまで)
  • 2種類の生体認証に対応
    オプションとして、指紋認証と音声認証の2種類の生体認証を追加できます。2つの生体認証機能を同時に搭載することも可能です。指紋認証はテクノイマジア株式会社、音声認証は株式会社アニモから技術供与を受けています。
  • eTRON/16Dualと互換
    『 SECURETRON32-B 』 は現行のeTRON/16Dualと互換性があり、eTRON/16DualのSIM形状のセキュリティモジュールを利用している機器では、ソフトウェアの変更なく利用可能です。(接触インターフェイスのみ)

【今後の展開】
当社は、『SECURETRON32-B』を機器組み込みセキュリティモジュール製品として、T-Engine※6フォーラム※7参加のハードメーカーに拡販していくとともに、UCやT-Engine、μT-Engine応用製品の携帯端末機器、情報家電など今後ネットワークに繋がり、セキュリティを要求されるシステムへの利用、展開を提唱していきます。本製品はYRPユビキタスネットワーキング研究所もしくは同研究所指定の販売会社経由でサンプル供給および販売します。
なお、9月14日から16日まで東京ビッグサイトで開催される「第7回自動認識総合展」のテーマコーナー・自動認識セキュリティ体験ゾーンにおいて、株式会社アニモと共同で「オンカードマッチング音声認証システム」として『SECURETRON32-B』を出展します。

※1 SIM(Subscriber Identity Module)
携帯電話会社が発行する、契約者情報を記録したICカード。携帯電話機に差し込んで利用者の識別に使う。サイズは15×25×0.8mm。
※2 UIM(User Identity Module)
SIMから機能拡張が行われ、契約者情報以外に、電話帳などのプライベートな情報や、クレジット決済用の個人識別情報などを暗号化して登録することが可能になったもの。
※3 UC(ユビキタスコミュニケータ)
YRPユビキタスネットワーキング研究所で開発された、ユビキタス環境とのコミュニケーションを行なうツール。UcodeRF-IDタグなどの読み取り機能を持つT-Engienをベースに開発された携帯機器。
※4 耐タンパー性:タンパー(tamper);勝手に変える。
ICカードは、プログラム的、物理的、電気的のいずれの方法を用いても、内部データの不正な閲覧や改ざんを行えない構造となっている。
※5 ISO7816:
ICカードの物理的形状や,リーダライタとの通信プロトコルなどを定めた世界標準規格。
※6 T-Engine
ユビキタスコンピューティング環境構築のための、オープンなリアルタイムシステム開発環境。
※7 T-Engineフォーラム
TRON技術(開発環境、製品など)の標準化、RF-IDの標準化を推進する任意団体。会長は坂村健(YRPユビキタスネットワーキング研究所長、東京大学・大学院教授)。会員数は470社・団体(2005年8月29日現在)。


■大日本印刷WEBサイト(DNP.CO.JP)■