ゲノム解析・プロテオミクス両分野で集中的に事業展開 ‐先進企業・研究機関とのアライアンスにより事業を加速‐
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島津製作所はゲノム解析及びプロテオミクス1)の両分野でのライフサイエンス事業を加速しま す。 ゲノム解析分野では遺伝子の塩基配列のわずかな個人差であるSNP(一塩基多型)解析や遺伝子 検査などで必用となる「大量DNA解析」に、また一方ポストゲノムの重要分野と目されるプロテ オミクス分野ではこれからの研究動向を見据えた「タンパク質解析」に集中した事業展開を2002 年より行います。
これは当社が2002年度より3ヶ年で実施する中期経営計画により進めるものです。中期経営計画 最終年度の2005年3月期を目途にライフサイエンス事業の売上高200億円を目標とし、早期の事業 基盤の確立を目指します。
医療・創薬をはじめとした先端分野でのバイオ研究に、解析機器、受託解析サービス、また試薬 において多角的かつ充実した研究支援を行うことで事業拡充の実現を図ります。 また将来は機器・受託・試薬の各分野で蓄積した遺伝子解析ノウハウを活用して、遺伝子検査な どの診断分野への進出を目指します。
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≪背景:バイオテクノロジーの進展≫ 2000年6月にヒトゲノム解読完了が宣言されましたが、これと前後してバイオテクノロジーは急 速に進歩し医療などへの応用が現実のものとなって来ました。がん、糖尿病、またアルツハイマ ー病など現在治療が困難な病気に対しても、遺伝子またこれらが作り出すタンパク質からのアプ ローチによる治療薬(ゲノム情報に基づく創薬)の開発が急進すると期待されます。
≪現況:当社のライフサイエンス事業について≫ 当社はゲノム・プロテオミクス研究には欠かせないDNA解析装置(1999年秋発売)やタンパク質 解析装置(2000年夏発売)などの高性能機器を商品化して、これを契機にしてライフサイエンス 事業を一気に加速しました。またこれら機器の開発と同時に、DNA・タンパク質の受託解析や研 究・検査用試薬の開発も同時に進めています。 「機器」の開発に並行して、「試薬」、さらに将来的には解析などの新たな「方法論」の開発に まで遡って研究を行い、バイオ研究支援事業においてより広い領域での事業活動を進めています 。 バイオ分野では、特に米欧を中心にしたグローバルな事業展開が不可欠です。当社は米欧海外子 会社も参画するライフサイエンス事業の新たな統一グローバルブランド「シマヅバイオテツクSh imadzu Biotech」のもとで、高度な専門知識を有するバイオベンチャー企業や世界有数の研究所 と連携し事業展開を加速しています。
≪ゲノム解析・プロテオミクス両分野での新展開≫ ゲノム解析はSNP解析や遺伝子検査など大量の解析を短時間で行うことが重要になるものと予想 されます。また一方で、プロテオミクス分野では様々な疾患の解明に直接結びつくタンパク質の 解析が、創薬をはじめとする多くの分野で一層盛んになされるものと予想されます。 当社は保有する質量分析やマイクロチップなどの先端技術をコアにして、ライフサイエンス事業 を「大量DNA解析」とこれからの研究動向を見据えた「タンパク質解析」とに集中して展開して 行きます。先進的な企業また研究機関とアライアンスを積極的に行い、2002年より以下の事項を 同時に進めて行きます。
受託解析ビジネスの拡充 当社は2000年4月にジェノミックリサーチ室を開設しDNA受託解析ビジネスを開始しました。以後 順次タンパク質解析またSNP解析を加え、内容を拡充し今日に至っています(ご参照:p.5 最近 の主な展開)。 *つくば市にタンパク質解析受託拠点を新設 国立研究機関・製薬企業の創薬研究所などが集中する筑波研究学園都市に、タンパク質受託解析 センターを2002年10月に新設する。受託解析の拠点をDNA解析を担当する京都とタンパク質解析 を担当する筑波の2ヶ所とし、東西での体制を強化する。 新施設は筑波研究学園都市に既設のライフサイエンス研究所(試薬開発グループ)と共に、受託 業務・研究開発に加えてマーケットリサーチや顧客開拓など関東圏でのバイオ事業の拠点とする 。10月時点の総員は約15名の計画。 2005年3月の受託解析ビジネスの売上高は、28億円を見込んでいる。 研究支援機器ビジネスの加速 1999年11月にライフサイエンス部を新設し、得意の分析技術を用いてDNA・タンパク質の先端的 解析装置の商品化を行って来ました(ご参照:p.5 最近の主な展開)。2002年に投入する新型装 置3機種は、大量解析の必要性からより一層のハイスループット化(解析の高速化)が求められ るバイオ研究市場のニーズを十分に満たすものです。 *繰り返し質量分析ができる世界初のタンパク質解析装置を発売 従来の質量分析計(MALDI-TOF-MS2))にイオントラップ(ion trap2))の新技術を加えるこ とで、現行の質量分析によるタンパク質解析を一層詳細・高精度・高感度に、さらには未知のタ ンパク質の解析も行うことができる。独自の新たな原理(イオントラップと質量分析の技術の組 み合わせ)に基づく質量分析の繰り返しをを実現した世界初の新機種で、英国子会社クレイトス 社3)にて開発。 大量のタンパク質に対して一層高度な解析が必要とされる創薬の研究開発において、スループッ トの飛躍的な向上と有用な解析情報の取得に大きく貢献し得ると思われる。 発売は2002年夏期、価格は6,000万円台の予定で、2002年30台(世界市場で)、2003年70台 (世界市場で)の販売を計画。
* タンパク質解析のハイスループット化と網羅的解析を実現する、タンパク質解析前処理装置 を豪社と共同開発 オーストラリアのバイオベンチャー企業プロテオームシステムズ社4)と共同開発中のタンパク 質解析の前処理自動化装置2機種を2002年に順次発売する。これらはタンパク質解析の前処理作 業を自動化するもので、タンパク質解析のスピード・確度がこれまでになく著しく向上し、創薬 などの研究開発推進に大きく貢献し得るものである。 ①商品名「エクサイズ(Xcise)」 二次元電気泳動で分離した試料の前処理(画像処理⇒抽出⇒試薬添加)を全て自動化。従来は複 数の機材を用いて手作業で行われていたもの。 発売は2002年春期、価格は3,000万円台の予定で、初年度50台(世界市場で)の販売を計画 。
②商品名「ケミカルプリンター(Chemical Printer)」 全く新たな方法論に基づき、詳細なタンパク質解析を実現するもの。 二次元電気泳動で分離した試料をそのまま写し取り、この上に繰り返し試薬を直接添加、さらに 解析も一連の工程で実行。同じ試料に対して繰り返し解析が実行できることで、解析の精度と効 率(スループット)を著しく向上。 発売は2002年夏期、価格は3,000万円台の予定で、初年度10台(世界市場で)の販売を計画 。
研究開発の強化 *次世代DNAシーケンサーを米バイオベンチャーと共同開発推進 バイオテクノロジーの先進的研究機関米国マサチューセッツ工科大学・ホワイトヘッド研究所の 教授が設立したバイオベンチャー企業ジェノメムス社5)と、2001年12月に共同開発契約締結。 多数の微細な溝が施されたガラス基板上で化学反応を行うマイクロチップ(μTAS)による次世 代のDNAシーケンサーの開発を進める。 従来の5~10分の1の短時間で、かつ試薬も少量で低いランニングコストで解析できることから、 遺伝子検査やSNP解析など今後到来の予想される大量DNAシーケンス時代に最適の画期的製品の商 品化を目指す。 競合企業に先立って、2003年第1四半期の発売を目指す。(価格は未定)
*プロテオーム解析用液体クロマトグラフ質量分析計を米NIHと共同開発推進 バイオテクノロージーの世界的中心研究機関米国NIH(国立衛生研究所)と共同で、高精度の分 離・分析を目指したタンパク質解析用液体クロマトグラフ質量分析計の開発を進める。NIHの世 界最先端のバイオテクノロジーを盛り込み、医療・創薬研究で必要とされる未知のタンパク質解 明に他にない有効な手段となる最先端の次世代装置の商品化につなげる。 すでにNIH に研究員を派遣、2004年度までの発売を目標にする。(価格は未定)
以上
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≪ご参考≫ 最近のライフサイエンス事業の主な展開 …… 1999年11月 大容量DNA解析装置を商品化 ライフサイエンス部を新編し、バイオ事業部門を拡充 2000年2月 豪プロテオームシステムズ社とプロテオミクス分野で業務提携 4月 ジェノミックリサーチ室を新設し、遺伝子受託解析ビジネスを開始 2000年7月 チップ型DNA電気泳動装置(μTAS)を商品化 8月 英国子会社にてタンパク質解析用質量分析装置(MALDI-TOF-MS)を商品化 2001年2月 米ルミサイト社から新型タンパク質解析装置を大量受注 3月 遺伝子研究用試薬の本格的ビジネス化を開始 4月 ライフサイエンス研究所を新設 受託解析サービスにタンパク質解析を追加 6月 米キアゲンジェノミックス社から技術導入し、受託解析サービスにSNP*解析を追加 10月 タンパク質の大規模解析を実現するタンパク質解析装置用前処理装置を、豪プロテオーム システムズ社と開発に成功(2002年に商品化予定) ……
用語説明 1)プロテオミクス〔proteomics〕 ゲノミクス(genomics)の対比的内容の言葉で、細胞あるいは生物に含まれる全てのタンパク質 の網羅的な発現解析を意味する。 2)MALDI-TOF-MSまたIon trapについて Matrix-Assisted Laser Desorption Ionisation –Time Of Flight‐Mass Spectrometer マトリクス(レーザー光を吸収する化合物)を添加した試料溶液にレーザー光を照射すると、レ ーザー光がマトリクスに吸収され試料・マトリクス混合物は熱エネルギーによりイオン化(+ま たは-の電荷を保有)する。〔以上がMALDI〕 このイオン化した試料を電場中で一定距離を飛ばし、その飛行時間(Time Of Flight)の測定か ら質量すなわち分子量を導き出す。〔以上がTOF-MS〕 分解能・感度・精度が高く、特にDNAやタンパク質など分子量の多い大きな分子の解析に最適で ある。タンパク質の解析では、タンパク質を構成するアミノ酸の分子量パターンを測定すること でタンパク質の種類を同定できる。 Ion trap MALDIでイオン化した試料を電磁場に閉じ込めて測定する質量分析の一手法。今回開発したイオ ントラップ技術では、閉じ込めた試料から特定のイオンを選択して更に小さく分解して測定する ことが繰り返し行える画期的なもの。試料に関する情報量が飛躍的に向上し、またタンパク質な どの大きな分子の測定が短時間で行える。 3)クレイトス社 http://www.kratos.com 社名:Kratos Group Plc.(島津製作所の100㌫出資) 本社:英国マンチェスター 買収:1989年 CEO:市村克彦 社員数:116名 年商:1,950万ポンド 業務内容:分析装置(MALDI-TOF-MS・XPS:Xray Photo-electron Spectroscopy)の開発・製造 ・販売 4)プロテームシステムズ社 http://www.proteomesystems.com 社名:Proteome Systems Limited 本社:豪州シドニー 設立:1999年 CEO:Keith L. Wiiliams 社員数:約70名 業務内容:タンパク質解析に関する高度な知識を活用して、新薬候補物質の探求・タンパク質解 析機器の開発・タンパク質に関するバイオインフォマティクスの構築など 5)ジェノメムス社 社名:GenoMEMS,Inc. 本社:米国マサチューセッツ州ボストン 設立:1999年 CEO:David M. Chao 業務内容:独自のMEMS技術(Micro Electro Mechanical Systems)を用いた、大規模シーケンス 用の超高速DNAシーケンサーやSNP解析装置などの開発
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