平成13年5月8日
キューサイ株式会社

山口県立大学とキューサイが研究
ケール原料の青汁による免疫力向上について
「日本栄養・食糧学会大会」で発表

青汁飲用により、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を攻撃・破壊する作用を持つ
NK細胞の活性が上昇する傾向を確認

キューサイ株式会社(社長:長谷川 常雄、本社:福岡市中央区草香江1丁目7-16)は、山口県
立大学大学院(森口 覚 健康福祉学研究科教授)と、緑黄色野菜ケールを原料とする青汁飲用に
よる免疫力の向上について検討を行いました。その結果、青汁飲用により、ウイルス感染細胞や
腫瘍細胞を攻撃・破壊する作用を持つNK(ナチュラルキラー)活性が上昇する傾向を確認しまし
た。この結果をふまえて、青汁飲用によりガン細胞の増殖を抑制する効果や、加齢に伴う細胞性
免疫能低下を防止する可能性に期待し、今後さらに検討していく予定です。

この研究内容は、「女子大学生の細胞性免疫能及び生理機能に対するケール(アブラナ科)搾り
汁投与の影響」として、5月8日「第55回日本栄養・食糧学会大会」(国立京都国際会館)におい
て発表されました。


【研究目的】
山口県立大学と当社は青汁のラットへの投与(凍結乾燥した青汁を含む餌を与えた)により、免
疫力の強さを表す指標となるNK細胞活性が3倍上昇することをすでに確認し、アメリカの科学書
籍(Vegetables,Fruits,and Herbs in Health Promotion,edited.by Ronald R.Wat
son ,CRC Press,2000)にて報告しています。そこで、健康な女子大学生を対象に、青
汁投与による細胞性免疫能への影響について研究しました。
  
【研究方法】
本研究内容を説明、実際に青汁を試飲していただき、無理なく飲める者を選び、その中から同意
が得られた健康な女子大学生(18歳~22歳)19名を対象としました。「キューサイ青汁」(ケ
ール100%)を4週間にわたり、毎日2パック(90ml×2=180ml)飲用してもらいました。飲用開
始前、飲用2週目および4週目の早朝空腹時に採血し、末梢血リンパ球ならびに血清を得て、以下
の項目を測定しました。

[測定項目]
・K562ガン細胞を標的とするNK活性をC-FDA法で測定
・末梢血リンパ球中の成熟T細胞、NK細胞の割合を測定
・血清中のIL-2濃度をELISA法で測定                など

【研究結果】
被験者19名の平均から、NK細胞活性は、飲用前、2週目、4週目とも有意差はみられませんでした
が、4週目で飲用前より増加する傾向がみられました。(グラフ<1>)

末梢血リンパ球中の成熟T細胞の割合は、飲用前、2週目、4週目といずれも60%強で、有意差も
増減している傾向もみられませんでした。またNK細胞の割合も、いずれも20%弱と有意差も増減
している傾向もみられませんでした。(グラフ<2>)
成熟T細胞、NK細胞のリンパ球中に占める割合に変化がなかったことから、飲用4週目にNK活性
の増加傾向がみられた原因は、NK細胞の数が増えたことによるものではなく、NK細胞あたりの“
抗腫瘍活性が上昇した”ことによる可能性が考えられます。


被験者19名それぞれのNK細胞の割合と活性との相関は下記のとおりです。

飲用前は、NK細胞の割合が多くなるとNK細胞活性が高くなるという傾向がみられ、相関係数は「
0.797」と強い相関がみられます。2週目の相関係数(r)は「0.362」と“細胞が多いほど活性が
高い”という関係は弱くなっています。4週目は相関係数「0.591」と飲用2週目に比べ相関関係
は高くなっています。また、回帰直線は飲用前よりも全体的に上へ移動しています。
飲用前、横軸「NK細胞」20%のとき、縦軸「NK細胞活性」は約10%。飲用4週目では、「NK細胞
」20%のとき、「NK細胞活性」が約15%となりました。このように、細胞割合が同じとき、飲用
前よりも飲用4週目に活性が高くなる傾向がみられました。これにより、飲用前に比べ、飲用4週
目には細胞あたりの活性が高くなっていたことが示唆されました。

NK細胞の活性化には、成熟T細胞が分泌するサイトカインによる活性化が関係しています。今回
、サイトカインのなかでIFN-γとIL-2の血清中濃度をELISA法により測定しました。血清中INF-
γ濃度は微量で検出されませんでした。IL-2は、飲用前1mlあたり10.45pg、飲用4週目で27.96
pgと、約2.7倍有意に亢進しました。(グラフ<3>)

IL-2は、ヘルパーT細胞から分泌され、T細胞の分化成熟作用やNK細胞の分化・増殖作用をもって
います。これにより、NK細胞あたりの活性が向上した原因は、T細胞から分泌されるIL-2を介し
た活性向上である可能性が示唆されました。

またこの期間、青汁飲用による生理機能への影響に関するアンケート調査(排便、不定愁訴[肩
こり、イライラなどストレスからくる不快感]、睡眠、食欲など)をした結果、飲用開始時に排
便が促進される傾向がみられました。


【期待される結果】
以上の結果から、青汁飲用4週目で、NK活性が上昇する傾向が確認されました。また、飲用期間
の延長にともない、NK細胞あたりの活性が高まる傾向が認められました。その機序として、IL-2
産生の亢進が認められ、T細胞を介したNK活性の亢進が起きている可能性が示唆されました。

NK細胞は、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を攻撃・破壊する作用を持っています。今回の結果をう
けて、青汁飲用によりNK活性が上昇することで、ガン細胞の増殖を抑制する効果や、加齢に伴う
細胞性免疫能の低下を防止する可能性が青汁にあることが期待され、今後研究していく予定です


【森口 覚 教授のコメント】
本研究は米国アリゾナ大学医学部のワトソン教授から「野菜、果物そしてハーブと健康」に関す
る本(原題前述)を共同執筆する旨の依頼に端を発します。TV-CMでお馴染みの「青汁」が健康
、とくに生体の免疫能に対してどのように影響するのか興味を抱きました。そこで、ラットを用
いて検討したところ、脾臓細胞のNK活性が「青汁」摂取により対照の約3倍程度亢進することを
見出しました。この結果を踏まえて、今回の女子大学生を対象とする研究に臨み、ヒトにおいて
も末梢血リンパ球のNK活性が「青汁」摂取期間の延長に伴い経時的に高まることを確認しました



用語解説

NK活性
ガン細胞を殺傷する強さを示し、免疫力の強さを表す指標
C-FDA法
蛍光色素(Carboxy Fluorescein Diacatate)によるNK活性測定法
NK細胞
リンパ球に分類される免疫細胞
正常細胞とガン細胞のわずかな違いをみつけ、攻撃する腫瘍細胞の天敵
T細胞
リンパ球に分類される免疫細胞のひとつ
サイトカイン
ほかの場所にいる細胞に、ある働きをさせるタンパク質の総称
IFN-γ
インターフェロン-γ(ガンマ)
サイトカインの中でも抗ウイルス作用のあるタンパク質のひとつ
IL-2 
インターロイキン-2
NK細胞を増殖・分化させるサイトカインのひとつ
ELISA法
Enzyme-linked immunosorbent assayの略
酵素免疫定量法