エラスチン形成に重要なMFAP-4量の皮膚弾力性との関係、加齢や紫外線による減少をヒト皮膚で初めて確認

花王

2020年9月10日

花王 株式会社

 花王株式会社(社長・澤田道隆)生物科学研究所は、皮膚において、エラスチン(弾性線維)の形成に必須のミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4 以下、MFAP-4)の量が少ないと皮膚弾力性が低いこと、さらに、加齢や紫外線でMFAP-4量が減少することを、初めてヒト皮膚で定量的に確認しました※1

 今回の研究成果は、「第84回日本皮膚科学会東部支部学術大会」(2020年8月22~23日、オンライン開催)にて発表しました。

※1 生命科学、生物医学を検索できる世界で代表的な科学文献データベースPubMedを用いて、“MFAP4 or MAGP36”で検索。「MFAP-4と皮膚弾力性の関係」「定量的な解析による加齢や紫外線での皮膚MFAP-4の減少」について該当なし(2020年8月21日現在、花王調べ)

 

背景

 花王は、シワ形成の一因として真皮のエラスチンの重要性にいち早く着目し、30年以上にわたり研究を重ねてきました。エラスチンは、主にエラスチン分子が積み重なってできたタンパク質複合体です。ゴムのように弾性の高い構造をもち、皮膚の弾力性の維持に重要な役割を担っています。

 花王は2001年に、皮膚に発現する特有のエラスターゼ(エラスチン分解酵素)を見いだし、その抑制物質を特定したほか、2011年には、エラスチン形成においてMFAP-4のはたらきが必須であることを世界で初めて発見。エラスチンをつくり出す皮膚線維芽細胞において、MFAP-4量が多いとエラスチンの形成が促進され、MFAP-4量が少ないとエラスチンの形成が抑制されるという関係性を明らかにしてきました(図1)※2

 皮膚の弾力性を保つには、正常なエラスチンが形成されていることが重要です。しかし、エラスチンは加齢や紫外線により減少したり変性したりすることがわかっています。花王は、エラスチンの形成にMFAP-4量が関与するという知見から、ヒト皮膚の弾力性にもMFAP-4量が関係しているのではないかと考えました。

 そこで今回、実際のヒト皮膚を対象として、MFAP-4量と弾力性の関係、MFAP-4量の加齢や紫外線による影響を定量的に検証することを試みました。

 

 MFAP-4量と皮膚の弾力性との関連

 今回花王は、20~30代の女性12名を対象に、紫外線のあたりにくい部位(非露光部)である上腕内側部のMFAP-4の遺伝子発現量と弾力性を表す指標のひとつである粘弾性を計測し、MFAP-4量と皮膚の弾力性との関係を検討しました。その結果、MFAP-4の遺伝子発現量が少ないほど、弾力性が低いことをヒト皮膚で初めて定量的に確認しました(図2)。

加齢や紫外線による皮膚MFAP-4量の低下

 加齢によるMFAP-4量の変化を確認するため、20~30代および60代女性の非露光部(上腕内側)と露光部(前腕外側)の皮膚に存在するMFAP-4量※3を比較しました。その結果、60代の非露光部は20~30代の非露光部と比較してMFAP-4量が顕著に低いことを確認しました。このことから、MFAP-4量は加齢によって低下することがヒト皮膚で初めて明らかになりました(図3)。

※3 皮膚から検出されたMFAP-4のタンパク質を画像解析することで定量化。

 さらに、60代の露光部と非露光部を比較するとMFAP-4量は露光部でより少なくなっており、ヒト皮膚においてMFAP-4量は慢性的に紫外線にさらされることによって低下することも確認されました(図4)。

まとめ

 今回、エラスチンの形成に不可欠なMFAP-4量が少ないヒト皮膚では、弾力性が低く、さらに加齢や紫外線によって皮膚のMFAP-4量が減少することが初めて定量的に明らかになりました。このことから、MFAP-4はヒト皮膚の弾力性と密接なかかわりがあることを裏付けることができました。

 花王は、今後も、エラスチンに関する研究を深めていくとともに、本研究で得られた知見を活かしてすこやかで美しい肌を実現する技術の提案をめざしていきます。

 

<参考情報>

花王のエラスチン研究

 

エラスチンに関する花王の主な研究成果
1984年

シワ研究開始

1994年

エラスチン研究開始

2001年

皮膚特有のエラスターゼを特定

2011年

MFAP-4がエラスチン形成に必須であることを発見

2020年

MFAP-4量の皮膚弾力性との関係、加齢や紫外線による減少をヒト皮膚で初めて確認

エラスチンの形成におけるMFAP-4のはたらき

エラスチンは、次のようなステップで形成されます。

線維芽細胞からエラスチン分子、MFAP-4、フィブリリンなどのタンパク質が作られる。

フィブリリンが束ねられ、エラスチンの土台となるミクロフィブリルが作られる。

ミクロフィブリルにエラスチン分子が結合して成熟したエラスチンが形成される。

 MFAP-4は、エラスチン形成の比較的初期段階において、フィブリリンを束ね、ミクロフィブリルを形成する(2)の役割を担っています。

 


図5 エラスチン形成におけるMFAP-4の役割

 

 

 

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プレスリリース添付画像

図1 2011年に解明したエラスチン形成とMFAP-4量の関係

図2 MFAP-4の遺伝子発現量と皮膚の弾力性

図5 エラスチン形成におけるMFAP-4の役割

図3 加齢によるMFAP-4量の変化

図4 紫外線によるMFAP-4量の変化

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