第30回「中堅企業経営者『景況感』意識調査」~世界33カ国同時調査~

※参考資料:本資料は昨日8月21日に公開した調査結果です。 太陽グラントソントンは、2017年5月に実施した非上場企業を中心とする中堅企業経営者の意識調査の結果を公表した(従業員数100人~750人)。この調査は、グラントソントン加盟主要33カ国が実施する世界同時調査の一環である。

8月22日

太陽グラントソントン

※参考資料:本資料は昨日8月21日に公開した調査結果です。

第30回「中堅企業経営者『景況感』意識調査」~世界33カ国同時調査~を発

・日本の景況感はDI -23と前回調査に引き続き改善を示す。

・米国の景況感が前期比27ポイント増のDI 81となり、調査開始以来最高のDIを記録。

・英国は2015年第4四半期以降、景況感の低下が継続。

・中国の景況感は前期からの改善はわずかなものの、長期的に安定

【日本の景況感の改善が継続】

世界33カ国の中堅企業経営者に対して行った、自国経済の今後一年の見通しに関する2017年第2四半期(調査実施期間2017年5月、以下今回)の調査において、日本の景況感DI*1が前回調査から引き続き改善していることが明らかになった。日本の景況感は、2016年第2四半期に大幅に悪化しDI -51となっていたが、今回はDI -23となり、前期比*2では22ポイント増、前年同期比では28ポイント増となり、景況感に堅調な回復が見られた。

【米国、日本の景況感が改善する中、英国は低下傾向が止まらず】

世界33カ国の平均の景況感DIは、前期比13ポイント増のDI 51となった。

主要国の景況感を見ると、中国は2015年第3四半期から緩やかな上昇が続いていたが、今回も前期から2ポイントのDI 48となった。景況感の改善はわずかなものの、安定したDI値を維持していることが分かった。

米国は前期比27ポイント増のDI 81となり、本調査開始以降最も高いDI値を示した。

一方、英国は2015年第4四半期からの低下傾向が止まらず、今回も前期比-4ポイント減、前年同期比では-18ポイントとなるとなるDI 22となった。

※1 DI:バランス統計手法Diffusion Index の略。景気判断DI「良い」との回答比率から「悪い」との回答比率を引いた景況感を示す指数。 ※2:従来は四半期毎の調査結果の発表としていたが、2016年第2四半期より年2回の発表に変更。

【英国の景況感DIがさらに低下】

【米国の景況感は調査開始以来の高いDI値を記録】

【日本は前回調査に引き続き改善するも依然低水準】

今回の調査で、調査対象国33カ国(左表)のうち景況感DIが高い国はインドネシア96、インド94、オランダ88フィリピン82、米国81などとなった。

一方、景況感DIがマイナスを示した国は、エストニア -2、タイ -4、シンガポール -20、ギリシャ -22、日本 -23、南アフリカ -28となった。

主要先進国では、前回調査で大きくDIを下げた英国が今回の調査でもDI 22とさらに下げ、景気への懸念が拡大していることが明らかになった。

一方、米国は前期比で27ポイント増、前年同期比では37ポイント増となるDI 81となり、米国の景況感としては本調査開始以降最も高いDI値を示した。

日本の景況感は、前期比22ポイント増のDI -23となり大きく改善したものの、対象国33ヶ国の中では32位となっており、依然として他国との比較では低い水準にとどまった。

世界33カ国の景況感の平均を見ると、前期比で13ポイント増、前年同期比では19ポイント増となるDI 51となり、対象国全体としては復調の傾向にあることが明らかになった。

その他、前回調査で最も大きなポイント改善を示したブラジルは、今回の調査では逆に大きくポイントを下げ、今回の調査中では2番目に大きな下げ幅となる前期比27ポイント減のDI 32となった。

前期比でもっとも景況感が悪化したのは南アフリカで、34ポイント減のDI -28となり、全33ヶ国中最も低い景況感となった。

その他、G7、EU加盟国、アジア太平洋地域平均は前期のDI値を上回ったが、 BRICs平均はブラジルの急落を受け前期比1ポイント減となった。

<調査実施期間>(インターナショナル)

2017年第2四半期:2017年 5月(33カ国)

2016年第4四半期:2016年11月(36カ国)

2016年第2四半期:2016年  5月(36カ国)

【今後一年間の自社の見通し】

・日本は8項目中の5項目でDIが悪化

・中国、「輸出」への期待が高まる

来期の自社の見通しについて、上昇、下降、変化なしのいずれかを質問したところ、日本の中堅企業の今後1 年の自社の見通しについては、 「販売価格」「輸出」「雇用」 の3項目で改善したものの、その他の「売上高」「収益性」 「新築建物」「設備投資」「研究開発」の5項目で悪化した。前回調査で大きく低下した「雇用」は39ポイントと大きく改善し、調査開始以来3番目に高い値となった。

また中国、アジア太平洋地域の「輸出」に注目すると、今回の調査で中国は2014年第3四半期以来の高い値(20ポイント)を記録し、日本も2016年第4四半期に大きく落ち込んだものの今回の調査では2016年第2四半期と同水準(12ポイント)に回復した。こうしたことを背景にアジア太平洋地域の「輸出」の平均も18ポイントととなり、過去2年間で最も高い数値となった。

【日本における動向】

日本経済の見通しについては依然として厳しい見かたが多いが、日本の景況感DIは前期より22ポイント改善しており、前回調査と同様、東京オリンピックの開催への期待がうかがえる。一方でインバウンド消費への期待は落ち着いたように見受けられる。また、悲観的にとらえている理由として、「人材不足」や「内需減少」など日本の少子高齢化に関連する項目は継続的に多く挙げられている。また「世界経済の影響」を理由に上げている割合も近年増加の傾向が見られる。

【今後一年間の日本経済の見通し】

日本の調査対象者に、今後一年間の日本経済の見通しについて尋ねたところ、 「たいへん楽観的だ」は前期調査と同じ1.3%となり、 「少し楽観的だ」と回答した人は13.3%と前期から6.6ポイント増加した。

一方、「たいへん悲観的だ」は5.3%と前期から2.7ポイント減少、「少し悲観的だ」も32%で前期から13.3ポイント減少した。

「たいへん楽観的だ」「少し楽観的だ」と回答した人に「楽観的だ」と考える理由(複数回答)を尋ねたところ、「オリンピック開催による経済活性化」が54.5%と最も高く、「現政権の政策」がこれに続いた。

前回調査で「オリンピック開催による経済活性化」 と同率40%であった「訪日客のインバウンド消費」はやや低下し、今回の調査では18.2%となった。

同様に「たいへん悲観的だ」「少し悲観的だ」と回答した人に、その理由(複数回答)を尋ねたところ、前回調査と同じく「人材不足」「内需縮小」(64.3%)が最も多くの回答者から挙げられた。また、同様に「少子高齢化」 「世界経済の影響」も前回と同じように多くの回答者から挙げられた。

一方で、「新興国の低迷」は前回の25%から大きく減り、3.6%という結果となった。

【経営課題】

自社の事業で過去一年間において達成された事項(複数回答)について尋ねたところ、前回調査と同様、最も多く挙げられたのは「5%以上の増収」(56.4%)で、次いで「市場における新製品・新サービスの開発」および「職員(人員)水準が5%以上増加した」 が続いた。

一方、前回調査と異なり、「M&A、吸収合併を行った(された) 」は10.4ポイント増加して、4番目に回答の多い項目となった。

今後一年間の主な経営課題について尋ねたところ、「5%以上の増収」が最も多く52.1%、次いで「市場における新製品・新サービスの開発」(38.4%)、「職員(人員)水準を5%以上増やす」(24.7%)が続いた。

その他、「研究開発への予算5%以上の投資」が前期と比べ6.7ポイント増えた一方で、「海外での新規市場参入」は6.3ポイント減少した。

理想の為替相場水準に関する質問では、 「1ドル=105円以上110円未満」との回答が24.3%で最も多く、 これに「1ドル=110円以上115円未満」(23%)が続いた。また加重平均では前期比で7円の円安方向に推移しており、前年同期の加重平均値からは0.7円の円高方向の推移を示した。

TPP交渉で貿易の自由化が進むことによる収益への影響について尋ねたところ、「収益力が高まる」「どちらかといえば収益力が高まる」の合計24%が、「収益力が低下する」「どちらかといえば収益力が低下する」の合計8%を16ポイント上回る結果となり、収益力に好影響を及ぼすと考える人の割合の方が依然として多いことが明らかになった。

ただし回答が最も多かったのは、従来と同様「わからない」(68%)であった。

また、政府に実施してもらいたい経済活性化の推進施策について質問したところ、前期と同様「法人税の引き下げ」(60.8%)や「設備投資減税」(44.6%)などが多く挙げられた。

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第30回「中堅企業経営者の意識調査」コメント

太陽グラントソントン広報担当パートナー 美谷 昇一郎

今回の2017年第2四半期調査(2017年5月)では、対象33カ国の今後1年の景況感見通しが前回(2016年第2四半期)から13ポイント上昇してDI51となった。

また、日本の景況感DIは-23となり、依然マイナスではあるものの、前回と比べて22ポイント増、前年同期比では28ポイント増となり、景況感に堅調な回復が見られた。

今回調査の実施された5月の有効求人倍率(季節調整値)(厚生労働省発表)は1.49倍と1974年2月以来43年3ヶ月ぶりの高さを記録している。しかし、実際の消費に結びつきやすいとされる所定内給与の伸びは2012年から16年で平均前年比0.5%にとどまる。これはバブル期に給与が年4%前後伸び、雇用改善と給与増が消費拡大へとつながった好循環が起きていた状況とは異なってきた。

ところが、ここへ来て、一部の企業では非正規雇用者の正社員化を推進したり、ボーナスや福利厚生といった待遇改善を前面に出すことで、優秀な人材確保に積極的に取り組む企業も出ている。例えば、物流業では宅配便等の運送基本料金の引き上げにより、人手不足の深刻な運転手の待遇改善に繋げようとしている。こうした人手不足が社会問題化している状況を受けて、運送料金の値上げには多くの利用企業が応諾している。また、恒常的に人手不足が深刻になっている介護業界や保育業界などでも、介護・保育資格を有する潜在的な働き手を掘り起こして人手不足を解消しようという動きを政府主導で進められており、労働条件の改善が徐々に進んでいる。

一方で、2017年3月の全国銀行の貸出残高は前年同月比3.0%増となり、企業の設備投資需要が回復している。また、2017年1~6月の貿易統計速報によれば、輸出額はアジア向け半導体製造装置や米国向けの自動車部品などが牽引し、前年同期比9.5%増となった。しかし、相対的に中堅企業ほど人手の不足感は深刻なものがあり、受注はあっても仕事をこなす人手がない状況があるため、外国人人材や高齢者の積極的な活用を模索するといった抜本的な対策が必要になっている。

さらに、大手広告代理店での過酷労働を苦にした自殺事件を端に発した長時間労働の見直しの動きが中堅企業まで広がってきている。今後は、中堅企業においても、人材確保と相まって、労働環境の改善が主な経営課題になってくるものと見られる。

消費に目を向けると、小売の下支えとなってきたインバウンド需要に陰りがみられる。今年2月から導入されたプレミアムフライデーは、毎月末金曜日(フライデー)に、普段よりもプレミアムな生活を推奨するという個人消費喚起キャンペーンであり、午後3時(15時)に仕事を終えることを奨励する働き方改革とも連携し、給与支給日直後に該当しやすい月末金曜日は、夕方を買い物や旅行などに充てることを推奨している。しかし、参加企業が少なく、市場全体の消費底上げまでには繋がっていない。また、プレミアムフライデー推進協議会が6月に実際のすごし方を聞いたところ、「家でゆっくり過ごした」(57.8%)が最も多く、倹約志向が根強い状況が続いている。

人手不足が中堅企業の経営にとって大きな影響を与える情況が長期化する見通しで、中堅企業にとっても、労働生産性を上昇させるための商品サービスの高付加価値化に絶え間ない企業努力が一層求められている。

以上

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