高齢乳癌患者ほど転帰が悪いことを大規模試験が示す

欧州臨床腫瘍学会年次大会で発表された大規模観察研究により、70歳以上の患者と70歳未満の患者では乳癌特異的死亡率に違いがあり、高齢になるほど乳癌死亡率が高いことが示された。

2016年10月14日

ジェノミック・ヘルス・ジャパン合同会社

高齢乳癌患者ほど転帰が悪いことを大規模試験が示す

化学療法が奏効すると思われる患者の特定に役立つツールの必要性が浮き彫りに

スイス、ジュネーブ発[2016年10月10日]-デンマークのコペンハーゲンにおける10月7~11日の欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology;ESMO)年次大会で発表された大規模観察研究(1) により、70歳以上の患者と70歳未満の患者では乳癌特異的死亡率に違いがあり、高齢になるほど乳癌死亡率が高いことが示されました。

この研究は、ホルモン受容体陽性(HR+)乳癌では高齢患者ほど転帰が悪いことを報告した国際TEAM試験(2) の結果を用いて、Oncotype DX(R)乳癌再発スコア(TM)結果を70歳以上の患者と70歳未満の患者で比較検討し、両群の乳癌特異的死亡率を評価しました。

(1) Shak S.ら、抄録番号146 O、ESMO 2016で発表。

(2)Van de Water W.ら、JAMA 2012。

国際TEAM試験における再発スコア結果が、癌統計の米国随一の情報源である国立癌研究所のSEERレジストリに提供され、乳癌症例に紐づけられました。2004~2011年の間に診断されたリンパ節転移陰性、HR+の乳癌患者の中から、207,320人を超える適格患者が特定されました。

解析の結果、Oncotype DX検査を受けていないもしくは再発スコア結果が18を超えていた70歳超の患者で、実際に死亡率が高かったことが示されました。さらに、70歳以上の患者では化学療法使用の報告が70歳未満に比べて有意に少なく、近年指摘されてきた高齢者の過少治療の問題を継続して調べる必要があることも裏付けられました。

国際老年腫瘍学会(International Society of Geriatric Oncology)会長のEtienne Brain教授は次のように述べています。「今日我々の世界では、研究者たちが乳癌治療の改良と合理化を目指して日夜働いており、その中には、予後判定と治療効果予測を向上させるためのゲノム検査などのツールの利用も含まれています。人口の高齢化と寿命の延長に伴い、癌と診断される高齢患者が増えつつある一方で、若年患者に比べるとその治療と転帰が不公平なものになっていることが懸念されます。この歴史的意義のある研究は、脆弱な高齢患者のための、より個別化した治療戦略につながるツールの利用も含めて、高齢患者の治療に取り組んで向上させることの重要性を指摘した、洞察に満ちたデータを提供してくれています。」

昨年、高齢の非転移性乳癌患者の治療を大規模(3)に国際比較した欧州癌治療登録(European Registration of Cancer Care;EURECCA)試験が、欧州諸国間で手術、ホルモン療法および化学療法の利用に大きな格差があることを示しました。この試験の著者らによると、これは高齢乳癌患者の治療に関するエビデンスが欠如していることが原因だそうです。

(3)Derks M.ら、抄録番号1808、ECC 2015で発表。

ジェノミック・ヘルスの最高科学責任者、スティーブン・シャック医師は次のように述べています。「ESMOで発表された結果は、Oncotype DX検査の利用と患者転帰の格差を明らかにしています。高齢の女性はリスクの低い疾患にしかかからない傾向があるという一般認識に反して、検査を受けていない患者と乳癌再発スコア結果が中間から高度の患者では乳癌特異的生存率が不良になることが示されました。これらの新しいデータは、Oncotype DX検査により高齢女性の腫瘍の生物学を調べることの明確な価値を強調しているだけでなく、再発スコア結果が乳癌患者の治療アプローチと転帰を向上させる貴重な情報を提供できるという今までにないエビデンスも示しています。」

●別のデータはリンパ節転移陽性乳癌患者におけるOncotype DX検査の有用性も強調

ESMOでは、Oncotype DX検査がリンパ節転移陽性症例においても正確に転帰を予測し、臨床有用性において重要であることを示すエビデンスを、7,300人を超える患者で示した2件のポスター発表も行われました。

その1つはイスラエルのクラリット健康保険からの研究(4)で、2008年1月から2011年12月までの間に検査を受けた微小転移とリンパ節転移のある患者700人以上を調べて、行われた治療とその後の転帰を検証したものです。その結果は、化学療法の使用と再発スコア結果が整合していたこと、および再発スコア結果が18未満の患者は、大多数(92.9%)がホルモン療法単独で治療され、転帰が非常に良好であり、追跡期間中央値の5.9年後における遠隔再発率は低かったことを示していました。

 (4)Stemmer S.ら、抄録番号147 PD、ESMO 2016で発表。

もう1つはSEERレジストリの分析(5)で、6,700人以上のリンパ節転移陽性患者における乳癌特異的生存率(breast cancer-specific survival;BCSS)を調べたものです。その結果は、微小転移または1~2個のリンパ節転移がある患者においても、再発スコア結果が18未満であれば、5年BCSSが非常に良好であったことを示しました。また、転移リンパ節の数と再発スコア結果が高くなるほど、生存率は低下していました。

(5)Miller D.P.ら、抄録番号150 PD、ESMO 2016で発表。

■Oncotype DXについて

Oncotype DX検査は、早期乳癌における化学療法が奏効する可能性と再発のリスクをともに予測できることが検証されている唯一のゲノム検査です。

欧州全域の保健医療機関が、主要な国際臨床ガイドラインのすべてに採用されているこの検査の価値を認めています。2013年にNICE(英国国立臨床研究所)がこの検査を評価して推奨するに至ったことにより、今では英国中の患者がOncotype DX検査を広く利用できるようになっています。英国以外の欧州諸国としては、スイス、アイルランド、ギリシャおよびスペインが、この検査に保険を適用しています。フランスでは、ゲノム検査のための財政支援制度を通じてOncotype DX検査を利用することができます。Oncotype DX検査についてもっと詳しく知るには、www.OncotypeDX.comをご覧下さい。

■ジェノミック・ヘルスについて

ジェノミック・ヘルスは、癌の過剰治療と最適治療の両方に対応したゲノムベースの診断検査を提供する世界のリーディングカンパニーです。弊社のOncotype IQ(TM)ゲノム情報プラットフォームは、世界クラスの科学と事業の専門知識と技術基盤を駆使して、癌患者の診断から治療の選択およびモニタリングまでの道のりを通じた治療計画策定のために、膨大な量のゲノムデータを臨床での的確な意思決定に役立つ結果へと読み替えられるようにします。ゲノム検査およびサービスのOncotype IQ製品ラインは現在、これまでに世界で60万人を超える癌患者の治療方針決定の指針として利用されてきた弊社の主力製品ライン、Oncotype DX遺伝子発現検査で構成されています。ジェノミック・ヘルスの検査製品ラインは拡大し続けており、体液と組織を使った検査も追加されます。当社は、米国カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を置き、スイスのジュネーブに国際本部を置いています。詳しくはwww.GenomicHealth.comをご覧下さい。Twitter: @GenomicHealth、 Facebook、 YouTubeそしてLinkedInでのフォローもお願いします。

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