江戸時代の金箔職人 ナノスケールで薄さ追求―日本の金屏風を蛍光X線分析 ポルトガルの研究チームが実証

2014年7月3日

シュプリンガー・ジャパン株式会社

江戸時代の金箔職人 ナノスケールで薄さ追求

日本の金屏風を蛍光X線分析 ポルトガルの原子物理学研究チームが実証

日本の製箔技術が独自に、そして豊かに発展した安土桃山~江戸時代の金箔職人は、まさに名工でした。当時の金屏風6点を分析したところ、金箔をより薄く打ち延ばす技の発展が垣間見られました。調査はリスボン大学原子物理学センターの研究グループによって行われ、代表であるソフィア・ペッサーニャ氏らは、シュプリンガーが発行するジャーナル「Applied Physics A: Material Science and Processing」( http://www.springer.com/materials/journal/339 )に、その蛍光X線分析による金屏風の研究成果を発表しています。

金箔は、金とその他の金属から成る極めて薄い膜です。重さはほとんどなく、取扱いには専用の道具を必要とします。世界で初めて美術品に金箔を用いたのは古代エジプト人であると考えられていますが、日本では仏教文化の浸透と共に製箔技術が進歩したと言われ、古くから、日本の職人は世界で最も薄い金箔を作ることができるとの高い評価を得ています。金箔は伝統的な日本画の装飾に用いられ、その最もよい例が、安土桃山時代後期(1573年~1603年頃)から江戸時代初期(1603年~1868年頃)にかけて製作された屏風画です。

ペッサーニャ氏の研究グループは、ポルトガルの博物館及び個人が所蔵する6点の金屏風(4点が安土桃山時代、2点が江戸時代初期の作品)を対象とし、蛍光X線分析によって金箔の厚みを比較することに成功しました。蛍光X線分析は対象物に損傷を与えることなく、その組成を調べることができる有効な手段です。今回の研究では、各元素の蛍光X線の輝度の比率から、金属薄膜層の厚みを比較する方法を利用しています。また、金属薄膜層の組成が純粋な金のみからなる対象( 100% Au)も、銀を5%含む対象(95% Au 5% Ag)も同等の結果を示すことが確認されました。

本研究により、江戸時代初期の作品である2点の金屏風の金箔の厚みに、100 nm程度の違いがあることが分かりました。この金箔の厚みの違いからは、より薄い箔を追求する箔打ち技術の発展が読み取れます。これら2点の金屏風は同時期に製作されたものと考えられていましたが、今回の研究によって、金箔の厚みが薄いものが、より新しいと判断することができました。

ペッサーニャ氏は「このように蛍光X線分析を用いることで、美術品を損傷することなく、同じ年代の2つの作品の製作順を明らかにすることができました。蛍光X線分析は美術品の年代特定に極めて有用です。」と述べています。

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<問い 合わせ先>

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電話:03-6831-7000  e-mail: info@springer.jp

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