図1 野菜作における資材施用法

2014年3月18日

露地野菜作において施肥量を大幅に削減できる「うね内部分施用機」のラインアップが完成

平成26年3月18日

農研機構
井関農機株式会社

露地野菜作において施肥量を大幅に削減できる「うね内部分施用機」のラインアップが完成 - 「うね内部分施用技術」のさらなる普及促進のために -

■ ポイント

・露地野菜経営の規模や様々な「うね 1) 形状」に対応した5機種の「うね内部分施用機」が開発・市販化され、うね立て 2) の際に肥料をうねの中央部にだけ線状に土壌と混合して施用することができる機械のラインアップが出揃いました。
・全国22道県40カ所以上の農家圃場で「うね内部分施用技術」の現地実証を行い、本技術は葉菜類だけでなく、根菜類、果菜類、花き類等多くの作物栽培において30~50%の施肥量削減効果があることが確認されました。

■ 概要

農研機構では、露地野菜作において施肥量を削減し、生産コストと環境への負荷を低減させることを目的として、井関農機株式会社と共同で「うね内部分施用機」を開発し、このたび様々な規模やうねの形状に対応した5機種のラインアップを完成させました。
これらの機械は、野菜を栽培するうねを立てる際に、肥料をうねの中央部にだけ線状に土壌と混合して施用する機械で、うね間など無駄なところには施用しないので、従来の圃場全体に肥料を施用する場合(全面施肥 3) )と比較して肥料施用量を30~50%削減でき、生産コストと環境への負荷を低減することができます。

予算:農林水産省委託プロジェクト研究「地域内資源を循環利用する省資源型農業確立のための研究開発2系」(平成21~22年度)および「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のためのプロジェクトB2系)」(平成23~25年度)

特許:畝内帯状攪拌施用機(特許第3806735 号(登録:平成18年5月26日))

■背景

キャベツ・ハクサイなど土地利用型の大規模露地野菜生産においては、移植前に肥料を圃場全面に散布して土壌と混和する「全面施用法」が行われています。しかし、この方法は、根圏以外の土壌にも肥料が分布することから、野菜が肥料を吸収する効率が必ずしも高くなく、うね間の通路などに施用された肥料は圃場内に蓄積したり、降雨などにより圃場外に流出して、近隣水域環境等に影響を与える可能性もあります。また、最近の肥料価格の高騰により生産コストが増加し、露地野菜生産者の経営を圧迫しています。そのため、生産量と品質を確保しつつ、肥料を大幅に減らす効率的な施用技術の開発が求められています。
そこで、露地野菜作において肥料施用量削減技術として線状に施用する「うね内部分施用技術」を開発しました。

■経緯

平成13年度から露地野菜作において施肥量を削減し、生産コストと環境への負荷を低減させることを目的として「うね内部分施用技術」に関する研究を開始し、平成16年度に基本技術を完成させました。平成17年度からは井関農機(株)と共同研究で実用機開発を開始し、平成20年度に「3条用うね内部分施用機」、平成21年度に「2条用うね内部分施用機」と「平うね用うね内部分施用機」、平成23年度に「全面マルチうね内部分施用機」、平成24年度に「4条用うね内部分施用機」が市販化され、露地野菜経営規模や栽培する各種うね形状に対応した「うね内部分施用機」のラインアップが完成しました。

■内容・意義

「うね内部分施用技術」は、現在、一般的に露地野菜作で行われている「全面施用法」(図1左参照)と異なり、うね中央部分の苗を定植する部分にのみ線状に土壌と混和させて施用し、うね間等の無駄な部分には施用しない方法(図1右参照)です。
本技術は、「うね内部分施用機」というトラクタ装着型の専用作業機で行います。この機械のロータリ軸には、一うね当たり2枚のディスクがうねの中心を境に同距離になるように取り付けられているのが特徴です(図2)。
ホッパー(容器)から繰り出された肥料は、2枚のディスク間の前方に散布され、2枚のディスクとその間の耕うん爪により横方向に逃げることなく土壌と攪拌・混和され、その後成形板でうねに成形されます。これによって、施用する資材はうねの中央部の設定範囲内に線状に土壌と混合して施用されます(図3)。この方法では、移植苗の根の周辺に肥料が存在するため、定植直後の根はすぐにその肥料を吸収することができ、初期生育が良好であるとともに、施用量を削減しても慣行施用法と同等以上の収穫量が得られることが明らかになっています。
「うね内部分施用機」は、経営規模や栽培作物、うね形状に応じて4条用、3条用、2条用、平うね用、全面マルチ用5種類の機械が市販されています(図4)。
平成16年度に岩手県で「うね内部分施用技術」の現地実証試験を開始し、これまでに22道県(北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、新潟県、石川県、長野県、愛知県、三重県、兵庫県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)40ヶ所以上の農家圃場で各地域の普及機関やJAのご協力を得て実施してきました。試験を行った作物は、葉菜類ではキャベツ、ハクサイ、レタス、ブロッコリー、カリフラワー等、根菜類ではダイコン、ニンジン、豆類では大豆、エダマメ、果菜類では加工用トマト、ナス、花き類では小ギク等であり、ほとんどの作物で施肥量を30~50%削減しても慣行栽培と同等の生育・収量が得られることが確認されました(図5)。

■今後の予定・期待

これまでに、「うね内部分施用機」は約130台が販売され、露地野菜生産に利用されており、今後も露地野菜における生産コストと環境への負荷を削減する技術として生産現場への普及が期待されます。

■用語の解説

1)うね
野菜等作物を栽培するために、畑の土を細長く盛り上げたところ
2)うね立て
野菜等作物を栽培するうねを作ること
3)全面施肥
肥料を畑全体に散布してロータリ等の耕うん装置を用いて土壌と混合する方法で、肥料は畑全体にわたって土壌と混合されている