健康時と比べた不調時の業務遂行能力の自己採点

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2013年3月28日

疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査

2013年3月28日

健康日本21推進フォーラム

疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査

 健康日本21推進フォーラム(東京都中央区、理事長:高久史麿・東京大学名誉教授)は、各種の疾患や症状が仕事の意欲やパフォーマンス、生産性等に与える影響を検討することを目的に、最近2週間以内に仕事に影響を及ぼした健康上の問題・不調を訴える生活者(有訴者)2,400人を対象にインターネット調査を実施しました。

   近年、生活習慣病に起因する糖尿病等の慢性疾患が増加する一方、セルフメディケーションの推進により健康上のトラブルに自己対処する人が増えています。このため、なんらかの疾患や症状を抱えながら仕事を続ける人も増え、出社しているものの業務遂行能力や生産性が低下している「プレゼンティーイズム」の問題が指摘されています。
 本調査は、健康日本21推進フォーラム「プレゼンティーイズム研究会」が研究活動の一環として実施したものです。
 調査結果の主なトピックは下記の通りです。

◆疾患・症状の生産性への影響の自己採点によるワースト3は、メンタル面の不調(56.5点/100点満点)、心臓の不調(63.0点)、月経不順・PMSなどによる不調(63.8点)。

◆より客観的なスケールで評価した生産性の低下率は、メンタル面の不調8.8%、心臓の不調7.4%、呼吸器の不調6.4%、月経不順・PMSなどによる不調5.9%、胃腸の不調5.6%の順。

◆心疾患や胃腸疾患等の身体的疾患や症状も、心の健康を損なう原因に。

◆月経不順・PMS等に悩む女性のヘルスリテラシーは低い。

◆メンタルヘルス不調による逸失利益は、1000人企業で約5人の離職に相当。

調査概要
 【調査主体】 健康日本21推進フォーラム
 【調査協力】 株式会社日本医療データセンター、株式会社損保ジャパン・ヘルスケアサービス
 【調査方法】 インターネット調査
 【調査対象】 最近2週間以内に仕事に影響を及ぼした健康上の問題・不調があり該当症状有訴者
          及び、「糖尿病」もしくは「糖尿病」予備群に該当する20~69歳の男女 計2,400人
          下記の①~⑫各200人

          ①心臓の不調(不整脈、狭心症など)
          ②胃腸の不調(胸やけ、胃痛、下痢など)
          ③呼吸器の不調(COPD、肺気腫、ぜんそくなど)
          ④メンタル面の不調(不眠、不安感、イライラなど)
          ⑤眼の不調(眼精疲労、ドライアイ、緑内障など)
          ⑥偏頭痛、慢性頭痛
          ⑦首や肩のコリ
          ⑧腰痛
          ⑨花粉症などのアレルギー性鼻炎(季節性、通年性)
          ⑩月経不順、PMSなどによる不調
          ⑪糖尿病である
          ⑫健康診断などで、血糖値の項目で再検査もしくは要観察になったことがある
           または 医師から血糖値が高めだと言われたことがある
 【調査期間】 2013年3月9日(土)~13日(水)


<健康時と比べた不調時の業務遂行能力の自己採点>
生産性に影響する疾患・症状のワースト3は、メンタル面の不調、心臓の不調、月経不順・PMSなどによる不調。

●健康時の業務遂行能力を100点とした場合の、各疾患・症状による不調時の業務遂行能力を、「モチベーション」「集中力」「計画・予定に対する結果」「顧客や同僚とのコミュニケーション」 の4項目、及び全体としての「生産性への影響」として自己採点してもらい、平均点を求めたところ、いずれの項目においても、「メンタル面の不調」の点数が最も低くなりました。

●次いで業務遂行能力に対する影響の大きな疾患・症状は、モチベーション及び集中力では「月経不順・PMSなどによる不調」、「計画・予定に対する結果」では「心臓の不調」、コミュニケーションでは「呼吸器の不調」でした。

●あくまでも自己評価ですが、生産性に影響する疾患・症状のワースト3は、メンタル面の不調(56.5点/100点満点)、心臓の不調(63.0点)、月経不順・PMSなどによる不調(63.8点)となっています。


<生産性と疾患>
より客観的なスケールで評価した生産性の低下率は、メンタル面の不調8.8%、心臓の不調7.4%、呼吸器の不調6.4%、月経不順・PMSなどによる不調5.9%、胃腸の不調5.6%の順。

●WLQ-J※を用い、各疾患・症状の生産性への影響を検討したところ、生産性に最も影響を与えているのは「メンタル面の不調」(91.2点/100点満点)で、 「心臓の不調」「呼吸器の不調」「月経不順・PMSなどによる不調」がこれに続きました。

●各疾患による生産性の低下率として見ると、メンタル面の不調8.8%、心臓の不調7.4%、呼吸器の不調6.4%、月経不順・PMSなどによる不調5.9%、胃腸の不調5.6%などとなっています。

※“Work Limitations Questionnaire,(c) 1998,The Health Institute,Tufts Medical Center/f/k/a New England MedicalCenter Hospitals, Inc.; Debra Lerner, Ph.D.;Benjamin AmickⅢ, Ph.D.;and GlaxoWellcome, Inc. All Rights Reserved” に基づき、株式会社 損保ジャパン・ヘルスケアサービスならびに株式会社 損害保険ジャパンがその日本語版を作成したもの。
「時間管理」「身体活動」「集中力・対人関係」「仕事の成果」の4つのカテゴリーの計25問で構成され、確立された計算式(非公開)で生産性を算出。生産性は100点~75点の幅で、健常者は98点程度とされている。


<心の健康と疾患>
心疾患や胃腸疾患等の身体的疾患や症状も、心の健康を損なう原因に。

●次に、厚生労働省の「うつ病対策推進方策マニュアル調査票」※を用い、各疾患・症状が最近2週間の心の健康状態にどのような影響を及ぼしているかを探りました。

●「メンタル面の不調」が5項目のいずれにおいても最も率が高くなっていますが、「毎日の生活に充実感がない」「これまで楽しんでいたことが楽しめなくなった」は心臓の不調がこれに次いで高率でした。
 同様に、「以前は楽にできていたことが今では億劫に感じられる」は偏頭痛・慢性頭痛において、「自分が役に立つ人間だと思えない」は月経不順・PMSなどによる不調において、「わけもなく疲れたような感じがする」は胃腸の不調においてそれぞれ高い率を示し、身体的疾患や症状が心の健康に影響を及ぼしている可能性が示唆されました。

<ヘルスリテラシーと疾患>

月経不順・PMS等に悩む女性のヘルスリテラシーは低い。

●ヘルスリテラシー※を各疾患・症状ごとに比較検討したところ、ほとんどの項目で「月経不順・PMSなどによる不調」が最も低くなりました(対象を女性だけにしぼって比較しても同様の傾向)。
 へルスリテラシーが低いということは、自分の健康課題に対処する能力が低いことを意味します。月経不順や月経痛等の婦人科系の悩みを抱えながらも、他に疾患や症状がない女性は、自分の悩みを健康課題とは認識せず、心の健康や生産性にも影響が出ている可能性が示唆されました。

●「自分自身の健康問題について、気軽に話せる同僚、上司、部下がいる」はメンタル面の不調が最も低く26.0%、また、「自分自身の健康問題の相談で、社内の健康相談を利用することがある」は偏頭痛・慢性頭痛が最も低く12.0%の結果となっています。

 ※ヘルスリテラシー:自分の健康課題を解決するために、健康情報やサービスを調べ、活用する能力。


<通院・服薬状況と疾患>
メンタルヘルス不調による逸失利益は、1000人企業で約5人の離職に相当。

●「現在通院しており、服薬もしている」通院・服薬率は、「糖尿病」が最も高く85.5%、次いで、「心臓の不調」「呼吸器の不調」の順でした。

●「通院していないが、服薬している」セルフメディケーション率は「偏頭痛・慢性頭痛」が最も高く41.0%、次いで、「花粉症などのアレルギー性鼻炎」「胃腸の不調」の順でした。

●「通院も服薬もしていない」未対処率は、「首や肩のコリ」が最も高く76.5%でしたが、「腰痛」(67.0%)、「メンタル面の不調」(56.0%)、「月経不順・PMSなどによる不調」(51.0%)、「眼の不調」(50.0%)など、未対処率が半数以上の疾患・症状も多く、対策が望まれます。

●試みに、株式会社日本医療データセンターの協力を得、同社が保有する母集団100万人以上のレセプトデータから、「メンタル面の不調」の代表的な診断名である「気分(感情)障害」の30~50歳代男女全体に対する受療率を見ると、3.4%でした。「メンタル面の不調」では非通院者が60.5%いますので、メンタルヘルス不調の発生率は少なく見積もっても5.6%以上と試算されます。
 メンタルヘルス不調による生産性低下率は8.8%でしたので、仮に従業員1000人で平均就業日数200日の企業においては、メンタルヘルス不調によって、約5人の離職(986日分の欠勤※)にも等しい逸失利益が想定されます。

※疾病発生率(%)×生産性低下率(%)×1000人×200日で計算。

<所感>
 京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻教授(健康情報学) 中山健夫

「セルフエスティームに配慮した経営を」

がんサバイバーシップに代表されるように、さまざまな病気をもちながら、病気と向き合って、仕事を続ける人たちが増えている。今日の生活習慣病の増加などを背景に、病気を抱えながら仕事を続けることは、もはや職域のごく当たり前の風景ともなっている。
そうした人たちがどんな思いで仕事をしているかと言うと、仕事を遂行する自分の能力や生産性についてはややネガティブな自己評価をしている可能性が本調査で示された。
セルフエスティーム(自尊感情)が損なわれる病気の代表がうつであり、分析対象とした11の疾患・症状のうち、メンタル不調が最も自己評価を下げており、大きな問題であることが確認された。
さらに、うつに続いて、心疾患や呼吸器疾患、胃腸の病気など身体の不調でも仕事における自己評価がかなり低下していることに注目する必要がある。これらの病気を持つ人々は、会社を休むほどではなくても、病気や症状のために本来のもてる力をセーブしている、またはセーブせざるをえないと感じていることがうかがわれる。そして病気によるセルフエスティームの低下の度合いは、病気によってかなり異なる可能性もある。
今日では職場の誰もが、多かれ少なかれこのようなセルフエスティームの低下を伴っていると考えたほうがいいかもしれない。働く人々の心身の健康、そして自分の力を発揮できているというセルフエスティームを考慮した人事考課制度や職場環境とはどのようなものか、その在り方を探っていくことが望まれていると言えよう。


<所感>

東京大学医学教育国際協力研究センター教授/健康日本21推進フォーラム理事  北村 聖
 「メンタルヘルス対策の経済効果に期待」

自己採点の主観的評価でも、WLQ-Jという調査票を用いたやや客観的な評価でも、メンタル面に不調のある人は生産性が低いという結果が出た。メンタル不調に悩んでいるときは実際、体も動かないだろう。これに対し、身体面の不調においては、糖尿病に代表されるように、業務遂行能力が比較的保たれている。産業労働界はメンタルヘルスの重要性を提唱しているが、メンタル不調さえ伴わなければ、業務遂行能力はある程度の水準を維持できると考えてもよさそうである。
メンタル不調を抱えた人は、やる気もコミュニケーション能力も低下しているので、そうした人がいる職場は楽しくないだろう。上司がメンタル不調になれば、組織ががたつくにちがいない。メンタルヘルス対策の経済効果は大きいのではないか。


健康日本21推進フォーラムについて
健康日本21推進フォーラムは、厚生労働省の策定した第3次国民健康づくり運動「健康日本21」
(21世紀における国民健康づくり運動)を産業界から支援する目的で1999年に設立され、
健康日本21推進全国連絡協議会の一員として活動する任意団体です。

健康日本21推進フォーラム URL:http://www.kenko-nippon21forum.gr.jp