2011年4月8日

【プレスリリース】EUがFTA交渉でインドに後発医薬品供給の新たな制限を要求

2011年4月8日

国境なき医師団

EUがFTA交渉でインドに後発医薬品供給の新たな制限を要求

ブリュッセルで7日から開催されている欧州連合(EU)とインドの自由貿易協定(FTA)協議において、EUがインド製の安価なジェネリック医薬品の供給に新たな制限を加える政策を推し進めていることを、国境なき医師団(MSF)は大いに懸念している。

EUは現在、インドと協議中のFTAに含まれる「海外投資に関する条項」の一部として、知的所有権のより厳格な保護を規定するよう要求している。この条項では企業などによる海外投資の保護が規定され、それには知的所有権の保護も含むとしている。この条項が導入されれば、欧州の企業が自社の利益や投資がインドの法律や政策によって損害を受ける恐れがあると判断した場合、インド政府を提訴することが可能になる。これによって、インド政府が安価なジェネリック薬を普及させるために医薬品の特許の無効化や、特許付与された薬の価格の引き下げなどの政策を実行した場合、欧州の製薬会社はFTAにおける投資保護の規定に反するとの理由で、インド政府を提訴することが可能となる。

MSFの必須医薬品キャンペーン政策責任者、ミシェル・チャイルズは語る。
「EUは交渉中のFTAは医薬品の普及に影響を及ぼすことはないと、私たちに繰り返し説明していますが、彼らの行動と言動には大きな矛盾が見て取れます。インドの裁判所は企業の利益よりも、公衆衛生の保護と医薬品の普及を優先するように規定しています。しかし、このような規定は、企業が独自に代理機関を通じてインド政府を提訴した場合には、適用されることは難しいでしょう。私たちは、FTAの海外投資に関する条項において、知的所有権の保護を要求することを止めるよう、EUに求めています」

欧州議会は4月6日、インドとEUのFTAの海外投資に関する条項は医薬品の供給を脅かすものであってはならないとの決議を採択しており、これはEUがインドとのFTAで推し進める姿勢と大きく異なっている。

さらに3月29日、インドのシャルマ商工大臣は、新しいジェネリック薬の製造に必要な薬の治験データを一定期間保護する「新薬データ保護期間」*の導入は新しく安価なジェネリック薬が市場に出回ることを遅らせ、国際貿易協定における規定の範疇外であるとの声明を発表している。MSFは、EUが新薬データ保護期間の導入をインドに求めることを止めることを明言するよう、要求している。

交渉中のFTAの条項には、より厳格な知的所有権保護の規定など、医薬品の供給を阻害する問題の内容が含まれており、MSFはこれらの条項に対しても取り下げを行うよう、EUに求めている。

MSFの必須医薬品キャンペーンのディレクター、ティド・フォン・シェーン・アンゲラー医師は話す。「EUは、医薬品の普及を目的とするインドの公衆衛生に関する法律や政策に対して、企業が提訴できるように協議を進めています。MSFは世界各国の活動地でインド製のジェネリック薬に大きく頼っている団体として、私たちはEUに対して患者の命をつなぐための薬の供給を脅かす行為を止めるよう、要求しています」

*新薬データ保護期間:新薬の安全性と有効性を証明する試験データの不正な商業的使用および開示からの保護義務を規定した権利。規制当局から販売許可を得るために提出が必要となる。規制当局がジェネリック薬の使用を許可することを一定期間妨げることができ、最初に薬を開発した製薬会社にとっては事実上の市場独占権となる。

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インドは「途上国の薬局」と呼ばれ、途上国に向けたジェネリック薬の主要な製造国である。インド製の安価なジェネリック薬のおかげで、現在500万人以上のエイズ患者が治療を受けられるようになっている。MSFが25ヵ国で17万人以上を対象に行うHIV/エイズ治療プログラムで使用する薬の80%以上が、インド製のジェネリック薬である。

[関連リンクURL]
インド・EU FTA関連情報  http://www.msf.or.jp/news/2010/10/4980.php