2009年12月16日

国境なき医師団(MSF)日本


特許プール、創設決定
低価格のエイズ治療薬
途上国への普及に期待

発展途上国のHIV/エイズ患者がより効果的で安価な治療を受けられるようにするため、国際的な医薬品購入機関「国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)」理事会は、「特許プール」を運営するライセンス供与機関を創設することを決定した。

「特許プール」とは、製薬会社が保有する治療薬の特許権を管理機構を通じて共有し、ジェネリック医薬品メーカーなどの利用者から特許料を受け取るしくみである。
「特許プール」の活用により、従来は実現が難しかった、薬価の引き下げや多剤混合薬(1つの錠剤に複数の薬剤を入れた薬)の開発が可能となる。

近年、発展途上国におけるエイズ治療の現場では、同じ薬を長期にわたり服用することで薬剤耐性が生じるケースが目立っている。第二、第三選択薬が至急に必要とされているが、新規に開発された薬剤は高価で入手困難なため、患者の生命が危機にさらされている。

異なる製薬会社によって開発され、製造、販売に至っている薬を異種配合し、新たな多剤混合薬の開発する取り組みも、特許の問題が障害となり進行が遅れている。この結果、治療の現場では、多種の薬剤を日に何度も服用することが困難な小児患者に対して効果的な投薬治療を行うことができない。また、治療を中断するケースが多くなることで、薬剤耐性の患者が増加するという負の連鎖も起きている。

国境なき医師団(MSF)の必須医薬品キャンペーンの政策責任者ミシェル・チャイルズは語る。
「多くの患者にとって、医薬品へのアクセスは生死を分ける鍵であり、特許プールの早期活用が切望されています。特許権者には、この制度への一般的な支援表明にとどまらず、ライセンスを公式にまた確実に供与することが求められています。『特許プール』を支援するMSFのキャンペーンに対して、複数の会社から前向きな返事が得られたのは心強いことです。」

UNITAID理事会によると、この「特許プール」は全ての発展途上国のためにあるとしているが、制度自体への参加に強制力はなく、その成否は特許権者の決定に委ねられている。「特許プール」活用以外での医薬品のアクセス改善に向けた取り組みとしては、2001年のドーハ宣言規定*を活用し、各国政府が、強制実施権の発動により必須医薬品へのアクセスを改善させる動きや、インドのように、公衆衛生を保護できる特許法案の制定などがある。

MSFが2009年11月にウェブサイト上で開始したUNITAIDの「特許プール」への参加を呼びかける電子メール送信キャンペーンでは、「特許プールに治療の鍵となる薬の特許権を託してほしい」と訴える30万通以上の手紙やメールが、一般の人びとから製薬会社へ送付された。

*ドーハ宣言規定:「公衆衛生を保護し、とりわけ、すべての人の医薬品へのアクセスを促進するというWTO加盟国の権利を支援するようにTRIPS 協定を解釈し実施することは可能であり、またそうあるべきである。」
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