2008年12月1日
特定非営利活動法人 国境なき医師団日本
エイズの救命治療を受けられるのは、小児患者の10人に1人
―世界エイズデー:小児HIVケアの規模拡大を呼びかける―
HIVに感染した子どもたち10人のうち9人は、エイズから命を守る抗レトロウイルス薬を得ることができない。国境なき医師団(MSF)は、各国政府ならびに資金拠出者らは既存の小児HIV検査と薬剤を子どもたちに届けるべく、より積極的に取り組む必要があることを訴える。現状は、HIVウイルスに感染して生まれてくる新生児にとって特に脅威である。治療を受けなければ、半数が2才の誕生日を迎えることなく亡くなってしまうのである。
世界中で190万人の子どもたちが抗レトロウイルス治療を必要としている。しかし、必要とする薬を得られるのは、20万人程度にすぎない。MSFは、すでに始まっている臨床試験を計画よりも速く進展させ、通常の多剤混合薬(1つの錠剤に複数の薬剤を配合した薬)の小児版の使用を顕著に拡大させることを、各国政府と資金拠出者らに対して呼びかけている。
MSF必須医薬品キャンペーンのディレクター、ティド・フォン・シェーン・アンゲラー医師は語る。「MSFのプログラムにおいて抗レトロウイルス治療を受ける子どもたちの数を大幅に増やすことができたのは、使いやすい多剤混合薬を導入した時でした。MSFの活動は、小児HIVのケアが可能であることを示しており、私たちは各国政府と資金拠出者らに対し、積極的な目標を定め、HIVに感染した多くの子どもたちの命を運命まかせにするのをやめるよう呼びかけています。」
富裕国においては、母子感染の予防が成功したことにより、小児のHIV感染はほぼ無くなっている。そのため小児のHIV感染は、ほぼ完全に貧困国における問題である。製薬会社にとっては、HIVに感染した子どもたちのためのより簡便な検査ツールと新しい薬剤を開発する金銭的動機は少ない。
フォン・シェーン・アンゲラー医師は語る。「現況でも治療はできますが、子どもたちにはもっと服用しやすい薬と診断方法が必要です。HIV/エイズから命を救う薬の多くは、成人用としてしか認可されていません。この状況は、変わらなければなりません。製薬会社は、全てのHIV治療薬と検査キットについて、使用しやすい小児版を開発するよう自主的に取り決めを行うべきであり、それが不可能であるならば、各国政府による圧力が必要です。」
治療を開始するには、感染を発見することが大前提となることから、簡便なHIV検査ツールがないことが、子どもたちがHIV治療を受けられる機会を阻んでいる。今日、幼児を診断するにはDNAを調べる複雑な方法しかなく、先端的な設備を備えた検査機関へ血液サンプルを送ることが必要とされる。
HIVに感染する子どもたちの大部分は妊娠中、出産もしくは授乳中に母親を通じて感染している。したがって、母子感染を予防する措置が必要不可欠である。また、既に感染した200万人の子どもたちもケアを必要としている。
2003〜2008年にかけて、15才未満の子どもたち1万人弱が世界各国で実施されたMSFのプログラムで抗レトロウイルス薬による治療を受けた。このうち、4千人は5才未満の子どもたちであった。
